近年では、男女の性別に関係なく、個人の能力が十分に発揮できる職場環境づくりが進んでいます。
以前の建設業界は、長く「男性社会」という風潮があったことから、女性を受け入れる環境が整備されていない傾向にありました。
しかし、人手不足という状況もあり、建設業界でも女性の活躍の場を増やすための取り組みが加速しています。
では、実際のところ、建設業界で働く女性の実態はどのようになっているのでしょうか?
そこで本記事では、建設業界で働く女性の実態について、また建設業界において女性が活躍しやすい職種などもご紹介したいと思います。
建設業界で働く女性の実態について
総務省の「労働力調査」によると、2016年の建設業における女性就労者の割合は15%となっています。
全産業の女性就労者の割合が40%を超えていることから比べると、かなりの低水準といえます。
ただし、女性就業者の数が少しずつ増加傾向にあることなどは、取り組みの結果が徐々に現れているのかもしれません。
また、職種別で見ると、2015年に国土交通省で実施された「建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査」では、事務系職員の割合が圧倒的に高いという結果でした。
なお建設業における職種別の女性率は、事務系職員で37.6%、技術者で4.5%、技能者で4.2%、その他で13.3%となっています。
このように、現場に携わる業務は男性が行い、バックオフィス業務は女性が行うといった役割分担が暗黙のうちにできていることがわかります
参考:国土交通省「建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査」
■建設業界で働く女性の割合が低い理由とは
建設業界で働く女性の割合が他の産業と比較しても低いのは、女性が働きやすい環境づくりが十分でなかったことが大きな理由といえるでしょう。
例えば、工事現場で女性専用のトイレが設置されていなかったり、あるいは育休、産休の制度が整っていなかったりすることなどです。
しかし、このような状況は、国としての取り組みも進んでいることから、改善されつつあります。
■女性の定着促進に向けた建設産業行動計画について
国土交通省では、2020年に「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を策定し、男女問わず誰もが働きやすい業界とすることを目的にさまざまな取り組みを計画しています。
「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」では、計画の柱として大きく3つのことを挙げています。
- 働きつづけられるための環境整備を進める
- 女性に選ばれる建設産業を目指す
- 建設産業で働く女性を応援する取組を全国に根付かせる
これら3本の柱には、官民を挙げた目標のほか、具体的な取り組みの内容も示されています。
以上の取り組みなどもあり、建設産業における女性の活躍の場がますます拡大していくことが期待されています。
参考:国土交通省「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」
建設業界で女性が活躍しやすい職種
建設業界では、まだまだ女性の就業割合は低い傾向にあり、そのなかでも高い割合を占めているのは事務系職員です。
しかし、その他にも幅広い職種で活躍できるチャンスがあります。
女性が活躍しやすいいくつかの職種について、以下にご紹介いたします。
■営業
営業の仕事は、顧客とコミュニケーションをとりながら自社商品を購入してもらうことです。
女性は、コミュニケーション能力が高い人が多いうえ、男性とは違った視点が強みとなるケースも多々あります。
また、営業は、他の職種より未経験からでも取り組みやすく、早い段階で結果を出すことも可能であるなど、性別に関係なく実力を発揮しやすいといえるでしょう。
■建築士
建築士は、法律に基づき建築物の設計や工事監理などを行う仕事で、また国家資格の名称でもあります。
以前は男性の取得者が多かった資格ですが、近年では女性の割合も増加しています。
設計に関してはテレワークも可能であることから子育てとの両立を図りやすく、また育児や介護などで職場を離れても後に復職しやすい点もこの職種の特徴です。
とくに住宅業界では、家事動線や生活動線を意識した設計ができるなど、女性ならではの目線を生かせることは大きな強みになるでしょう。
■CADオペレーター
CADオペレーターは、建築士の指示のもとにCADソフトを用いて図面の製作や修正を行う仕事です。
CADオペレーターの仕事は、どちらかといえば専門的な知識よりも指示を忠実に反映できる正確性が重要となります。
派遣やアルバイトなど働き方も柔軟で、テレワークもしやすいことから、女性が多く活躍している職種となっています。
■インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、クロスや家具、照明、カーテンなどインテリアに関する総合的なプランをつくりあげる仕事です。
とくに、顧客の好みをうまく引き出すためのコミュニケーション能力や、センスや流行を生かした空間プロデュースを行うための能力などが必要となります。
そういった点では女性のほうに適性があるといえ、また実際に多くの女性がこの職種で活躍しています。
なお、インテリアコーディネーターに関する詳しい内容は「【インテリアコーディネーター】仕事内容や必要資格などを解説」の記事を参考にしてください。
■重機オペレーター
重機オペレーターは、重機を操作することで、人力による作業の負担を軽減し、工事の効率化を図る仕事です。
重機の種類は多く、操作するには基本的に資格が必要となります。
女性でも実際に活躍している人が増えていますが、仕事内容によっては若干の力仕事が必要となるケースがあることは理解しておく必要があるでしょう。
なお、重機オペレーターに関する詳しい内容は「【重機オペレーター】仕事内容や必要資格などを徹底解説」の記事を参考にしてください。
■施工管理
施工管理は、工期までに工事を完成させることを目的とし、おもに工程管理や品質管理、安全管理、原価管理などを行う仕事です。
基本的に力仕事ではないため、適性があれば性別に関係なくできる仕事となります。
女性が働きやすい環境づくりが進んでいることから、今後も女性の割合が増えていく業種といえるでしょう。
まとめ
建設業界は、深刻な人手不足が課題となっており、優秀な人材確保が急務です。
そのため、これまで就業者の割合が少なかった女性が活躍できるための環境づくりが急速に進んでいます。
ものづくりの醍醐味に魅力を感じている人は、建設業界で活躍することを目指してみるのもよいでしょう。