住宅の新築工事は、周囲に「仮囲い(かりがこい)」と呼ばれるフェンスを設置して行うことが一般的です。
「仮囲い」は、工事を進めるうえで重要な目的があり、とくに施工管理者は万全な計画を立てて確実に設置する必要があります。
では工事期間中に設置する「仮囲い」の重要な目的とはどのようなことでしょうか?
また必ず設置しなくてはならないものなのでしょうか?
そこで本記事では、施工管理者が知っておきたい工事現場に設置する「仮囲い」の目的について、詳しく解説したいと思います。
仮囲いとは?
そもそも仮囲いとは、工事期間中に現場敷地内の外周に設置する囲いのことをいい、建築基準法によって設置基準が定められています。
その基準とは以下の通りです。
木造の建築物で高さが13m若しくは軒の高さが9mを超えるもの又は木造以外の建築物で2以上の階数を有するものについて、建築、修繕、模様替又は除却のための工事を行う場合においては、工事期間中工事現場の周囲にその地盤面からの高さが1.8m以上の板塀その他これに類する仮囲いを設けなければならない。
ただし、これらと同等以上の効力を有する他の囲いがある場合又は工事現場の周辺若しくは工事の状況により危害防止上支障がない場合においては、この限りでない。
(建築基準法施行令:第136条の2の20)
以上の条件を満たす工事現場においては仮囲いを設置しなくてはなりませんが、一方で当てはまらない場合は必ずしも必要ではありません。
とはいえ、第三者の安全を確保し工事を円滑に進めるためにも、周辺に配慮した仮囲いを設置することが重要になります。
また、工事の着工前には、確認済証の交付を受けた建築物であることを示す「確認表示板」を見えやすい場所に掲示しなくてはならないことが建築基準法によって定められています。
着工にあたって、これらが適切に行われていない現場は、近隣から「十分な管理ができないのでは?」と不安を与えるかもしれません。
よって、仮囲いなどの設置状況は、施工会社および施工管理者の工事に対する姿勢を問われる要素となることは考慮しておく必要があるでしょう。
工事現場に仮囲いをする目的とは?
工事現場に仮囲いをするのはいくつかの目的があります。
その目的とは、おもに以下の3つが挙げられます。
- 第三者の安全確保
- 資材やゴミなどの飛散防止
- 会社のアピール
■第三者の安全確保
工事現場内には一般の環境より危険が潜んでいる可能性が高く、安全に対する認識が低い第三者が立ち入ると不測の事態に陥ることがあります。
しかし、仮囲いを設置すると、工事現場と外部を遮断して第三者の安全を確保することが可能となります。
とはいえ、外部と遮断しているから安心ということにはなりません。
例えば、仮囲いの下側から洗い水などが流れ出ると、通行人が足を滑らせたり、衣類を汚したりする可能性も考えられます。
施工管理者は、あらゆるリスクを想定し、よりきめ細かい配慮も必要です。
■資材やゴミなどの飛散防止
現場内には、多くの建設資材やゴミなどがあります。
そして、作業中には粉じんが生じることもあり、これらが近隣へ飛散して洗濯物や車を汚したりキズをつけたりした場合はトラブルに発展することがあります。
しかし、仮囲いがあると、現場からモノが飛散して近隣に迷惑をかけることを防止するには非常に効果的です。
また、台風時など強い風が吹くときには仮囲いを超えていくことも予想されるため、より強力な飛散防止の対策をとる必要があります。
例えば、資材をロープで固定したり、あるいはゴミ箱にネットをかぶせたりすることなどです。
施工管理者は、天候による影響なども考慮しておく必要があります。
■会社のアピール
住宅会社によっては、仮囲いに社名やロゴマークなどを入れてブランドイメージの向上を図っています。
きれいで周辺に配慮した現場づくりができる住宅会社というアピールができれば、宣伝効果は高まり、集客へとつながる可能性があります。
逆に、仮囲いに社名やロゴマークを入れているにもかかわらず、現場が雑然としていたり、また作業員のマナーが悪かったりすると失客につながるかもしれません。
つまり、会社のアピールをするのは、現場に関わる人たちの行動がともなわないと効果がないということです。
施工管理者は、会社のブランドを汚さないためにも、安全管理や近隣配慮などやるべきことを確実に行う必要があります。
まとめ
工事現場における仮囲いは、近隣住民を守るための措置となるため、施工管理者はしっかりと計画を立てて確実に行わなければなりません。
また、不備があった場合はトラブルに発展する可能性もあります。
仮囲いを一度設置したからと安心するのではなく、着工から完工までしっかりと注意を払っておくことも重要です。