「経営事項審査」とは、建設会社の経営状況に関するいくつかの項目について、一定のルールのもとに数値化して評価する通信簿のようなものです。
建設会社が公共工事を直接請け負うためには、「経営事項審査」を受けなければならないことが建設業法で定められています。
しかし、「経営事項審査」については、「聞いたことがない」という人や「よくわからない」という人が大半ではないでしょうか?
そこで本記事では、建設会社の通信簿である「経営事項審査」とは具体的にどのようなものなのか、詳しく解説したいと思います。
経営事項審査とは
経営事項審査とは、公共工事を受注しようとする建設会社が受けなければならない経営に関する審査のことをいい、略して「経審(けいしん)」とも呼ばれています。
経営事項審査は、以下の通り建設業法に定められています。
建設業法 (経営事項審査)第27条の23
公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。
経営事項審査の審査項目は、経営状況や経営規模、技術的能力などであり、それぞれ数値化することで評価を行うものになります。
要するに、数値の大きさが建設業者の実力として評価されるため、点数が大きくなるほど規模の大きな工事を受注しやすくなるわけです。
なお、民間工事の場合は、基本的に「経営事項審査」を受ける必要はありません。
しかし、元請業者によっては取引条件となっていたり、あるいは行政から補助金が出るような工事であったりする場合などは、必要となるケースがあります。
■経営事項審査は建設業許可の取得が必要
公共工事の入札に参加し、受注するためには、経営事項審査を受けなければなりません。
そして、その経営事項審査を受けるには、建設業許可を取得していることが前提となります。
建設業許可とは、請負金額が500万円以上となる工事を行う建設業者が必ず取得しなくてはならない許可のことをいいます。
よって、500万円未満の工事のみを行う業者であれば、建設業許可を取得する必要がありません。
ただし、公共工事の入札に参加するのであれば、請負金額の大小に関係なく経営事項審査を受けなければならないことは注意が必要です。
なお、建設業許可に関する詳しい内容は「【建設業の基礎知識】建設業許可とはなに?」の記事を参考にしてください。
■経営事項審査の審査項目について
経営事項審査は、以下の通り大きく4つの審査項目があります。
- 経営規模
- 経営状況
- 技術力
- その他審査項目(社会性等)
これらの項目について、定められている式に当てはめて「総合評定値」を算出します。
「総合評定値」を算出する式とは、以下の通りです。
・総合評定値 = 0.25 X1 + 0.15 X2 + 0.2 Y + 0.25 Z + 0.15 W
経営事項審査の審査項目と上記式の内容について簡単に解説いたします。
経営規模について
X1:完成工事高
X2:自己資本額および平均利益額
経営状況について
Y:決算書の財務内容から経営状況分析機関により算出
技術力について
Z:技術職員数および元請完成工事高
その他審査項目(社会性等)について
W:労働福祉の状況や建設業の営業継続の状況など9項目を評価して算出
経営事項審査の虚偽申請
経営事項審査は、公共工事を受注するには必ず受けなければなりません。
しかし、なかには必要書類に虚偽内容を記入して審査を受ける業者も見られます。
当然ですが、虚偽申請は違法行為です。
そのため、国土交通省でも防止のための対策を強化しており、その結果として虚偽が発覚するケースは増加傾向にあります。
なお、経営事項審査の虚偽申請に違反した場合の罰則は以下の通りです。
・6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金に処する
また、この他にも、公共工事の指名停止や建設業許可の取消し処分などを受ける可能性もあります。
公共工事には税金が使われていることもあり、いかなる場合でも不正があってはなりません。
経営事項審査の虚偽申請で、厳しい罰則を設けられていることも仕方ないといえるでしょう。
まとめ
経営事項審査は、公共工事を受注するためには必ず受けなければならない審査であり、建設会社の通信簿といえるものです。
民間工事では、基本的に受ける必要はありませんが、場合によっては経営事項審査が取引条件となっているケースなどもあります。
また、統一されたルールに基づいて行われるため、建設会社が経営状況を客観的に把握するうえでも有効です。