職業選択の自由とはどういう意味?同業他社への転職の制約は有効?

職業選択の自由とはどういう意味?同業他社への転職の制約は有効?

転職や就職を考えるとき、わたしたちは、基本的にどのような職業でも選べますが、これは、日本国憲法により「職業選択の自由」が保障されていることが大きな理由です。 では、「職業選択の自由」とは具体的にどのようなことをいうのでしょうか? また、会社によっては、いわゆる「競業避止義務」を労働契約のなかに含め、同業他社への転職に制約を課しているケースも見られます。 このような労働契約は、会社側の利益を守る措置ともとれますが、「職業選択の自由」に反する行為でもあることは疑問が残る点です。 そこで本記事では、そもそも「職業選択の自由」とはどのような意味があるのか、また同業他社への転職を禁止するような契約は有効なのか、解説したいと思います。


転職や就職を考えるとき、わたしたちは、基本的にどのような職業でも選べますが、これは、日本国憲法により「職業選択の自由」が保障されていることが大きな理由です。
では、「職業選択の自由」とは具体的にどのようなことをいうのでしょうか?

また、会社によっては、いわゆる「競業避止義務」を労働契約のなかに含め、同業他社への転職に制約を課しているケースも見られます。
このような労働契約は、会社側の利益を守る措置ともとれますが、「職業選択の自由」に反する行為でもあることは疑問が残る点です。

そこで本記事では、そもそも「職業選択の自由」とはどのような意味があるのか、また同業他社への転職を禁止するような契約は有効なのか、解説したいと思います。

職業選択の自由とはどういう意味?

職業選択の自由とは、自身の職業を自由に決定できる権利のことをいい、日本国憲法で以下の通り定められています。

日本国憲法 第22条 
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する

また、この職業選択の自由には、自身の職業を自由に決定できる権利とともに、その選んだ職業を遂行する自由「営業の自由」も含まれると考えられています。
というのも、自由に職業を選べても、実際に遂行できないようでは、憲法で保障を謳う意味を成さないためです。

過去にはなかった職業選択の自由

今でこそ、誰もが当たり前のものと認識していますが、大日本帝国憲法(明治憲法)にはそのような条文はなく、またさらにそれ以前には士農工商といった身分制度があった時代も存在します。
このように職業を自身で選べない歴史があり、弱い立場の人を保護する意味でも職業選択の自由がつくられたのです。

職業選択の自由も規制を受ける

職業選択の自由は、日本国憲法に定められているとはいえ、就きたい職業に必ず就けるわけではありません。
というのも、完全な自由を許容してしまうと、それはむしろ国民に弊害をもたらすことになりかねないためです。

例えば、医師や調理師、美容師などになりたい場合は免許を取得する必要があり、そして国家公務員になりたい場合は難しい試験に合格する必要があります。
また、当然ですが、違法行為となることで収入を得るような職業が認められるわけがありません。

つまり、職業選択の自由は、日本国憲法の第22条にもあるように「公共の福祉」による規制を受けるということです。
そして、この規制の目的は、以下の通り大きく2つあります。

  • 消極的規制
  • 積極的規制

消極的規制

消極的規制とは、国民の命や安全、健康を守るために設けられた規制です。
例えば、医師免許による規制などが挙げられます。

積極的規制

積極的規制とは、社会的弱者の救済や経済の持続的な発展を保護するために設けられた規制です。
例えば、大型店出店規制などが挙げられます。

同業他社への転職の制約は有効?

日本国憲法には、職業選択の自由が定められており、誰でも自由に就職や転職が行えます。
ところが、会社によっては、同業他社への転職を禁止したり、あるいは損害賠償の対象としたりするなど、いわゆる「競業避止義務」を就業規則に含めているケースがあります。

「競業避止義務」は、一般的に競合する他社への技術やその他情報の漏えいを防止することを目的とするため、一見すると仕方ないことと考えがちです。
しかし、このような「競業避止義務」は、合理的な理由がなければ、職業選択の自由に反して無効とされています。

とはいえ、「競業避止義務」をまったく認めないということになれば、会社側としても利益を害されることにもなりかねません。
そのため、双方の利益調整として、経済産業省では「競業避止義務」の有効性を判断するための基準を6つ挙げています。

  1. 守るべき企業の利益があるか
  2. 従業員の地位が競業避止義務を課すことが必要な従業員であるか
  3. 地域的な限定があるか
  4. 競業避止義務の存続期間が労働者の不利益の程度を考慮しているか
  5. 禁止される競業行為の範囲について適切な制限があるか
  6. 代償措置が設けられているか

要するに、「競業避止義務」で職業選択の自由を妨げられることは基本的にあってはなりませんが、不当に情報漏えいすることは認められないということです。
そのような一般的な常識が守られれば、同業他社への転職は制限を受けることなく自由に行えます。

まとめ

職業選択の自由は、日本国憲法に定められた国民の権利です。
しかし、完全な自由が認められるわけではなく、一定の規制があることは知っておくとよいでしょう。

関連するキーワード


働き方

関連する投稿


副業で有利な資格【5選】

副業で有利な資格【5選】

近年、副業を解禁する会社は増加傾向にあり、実際に取り組んでいる人も多いのではないでしょうか? 副業の魅力といえば、これまで以上に収入が増えるということです。 とはいえ、副業を始めれば誰でも収入を増やせるのかというと、それほど簡単ではなく、やはり一定のスキルが必要となります。 そのスキルといえば、なんといっても資格を取得することです。 そこで本記事では、副業で有利となる資格について、とくに収入を得やすい5つをご紹介したいと思います。


株主総会とはなに?決めるための方法や種類など徹底解説

株主総会とはなに?決めるための方法や種類など徹底解説

日本国内で最もポピュラーな会社形態といえば、株式会社です。 そして、会社法では、株式会社に必ず置かなければならない機関が定められています。 その機関とは、「取締役」と、そして「株主総会」です。 「株主総会」といえば、株式投資をしている人にとってはなじみのある言葉かもしれません。 しかし、具体的にどのような内容で、またどれだけ重要な意味を持つものかよくわからない人も多いのではないでしょうか? そこで本記事では、株式会社にとってきわめて重要な機関である「株主総会」について、どのように決議するのか、また「株主総会」にはどのような種類があるのかなど徹底解説したいと思います。


【ビジネスマンは知っておきたい】アンガーマネジメントとはなに?

【ビジネスマンは知っておきたい】アンガーマネジメントとはなに?

ビジネスにおいて思い通りにいかないことは多く、イライラしたり、あるいは他人や物にあたったりした経験がある人も多いのではないでしょうか? ところが、怒りの感情をダイレクトに表現してしまうと、周囲との距離ができてしまい、マイナスに働くことも少なくありません。 そんな怒りの感情をうまくコントロールする方法が「アンガーマネジメント」です。 また、「アンガーマネジメント」を身に付けると、ビジネスだけでなく、日常生活でも活かせるとして、多くの人が参考にしています。 そこで本記事では、ビジネスマンがぜひ参考にしたい「アンガーマネジメント」について、その内容や方法などをご紹介したいと思います。


【転職活動の基礎知識】退職する際に知っておきたい5つのポイント

【転職活動の基礎知識】退職する際に知っておきたい5つのポイント

転職を決意したら、退職するまでの間にさまざまな手続きが必要となります。 とはいえ、会社によっては強い引き留めにあったり、あるいは理由をつけてなかなか辞めさせてもらえなかったりなど、思い通りにいかないケースも少なくありません。 しかし、退職は、労働者の意思により自由に行えることが認められており、決意したのであれば粛々と進めることが重要です。 そこで本記事では、会社を退職するときの手続きを、スムーズに進めるために知っておきたい5つのポイントをご紹介したいと思います。


パワハラで労災になることがあるって本当?認定の条件とは

パワハラで労災になることがあるって本当?認定の条件とは

仕事中や通勤中に労働者がケガや病気をした場合、その補償を受けられる制度が「労災保険」となります。 そして、ケガや病気の原因が「パワハラ(パワーハラスメント)」である場合でも、「労災保険」が認められ、補償が受けられる可能性があります。 これは、2020年の「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」の施工にともない、労災認定基準に「パワハラ」の項目が追加されたことに端を発します。 では、「パワハラ」が労災認定されるには。どのような条件を満たす必要があるのでしょうか? そこで本記事では、「パワハラ」が労災認定されるための条件について、詳しく解説したいと思います。


最新の投稿


【体験談】住宅会社の事務職はツラいよ?良いところ辛いところ

【体験談】住宅会社の事務職はツラいよ?良いところ辛いところ

住宅会社の事務員として、実際に働いた感想としては、普通の会社の事務より辛かったです。住宅会社は建設業界であり、建設業の仕事は非常に専門的で、なかなか難しいと言えます。ただ、事務員のスキルが高い女性は少なく、それでいて事務の求人は多いため、スキルを身につければ職に困らないとも言えます。体験した内容から少しでも皆様の参考になれば幸いです。


住宅会社における事務職の種類(総合・技術・営業)

住宅会社における事務職の種類(総合・技術・営業)

事務職はどの会社でも必要な業務を担う重要な仕事です。事務がいることで他の実務が円滑に進みます。住宅会社での事務は、実は様々な業務があります。住宅工事がとても複雑であるだけでなく、営業、施工外注、不動産など様々な業者、お客様とやりとりをするため、連絡だけでも煩雑になります。住宅会社での事務はどのような仕事を行なっているのでしょうか?この記事では大きく3つに分けてご紹介いたします。


【おすすめ資格5選】住宅会社の事務員に役立つ資格はどれ?

【おすすめ資格5選】住宅会社の事務員に役立つ資格はどれ?

事務員が有能であれば、仕事も非常に捗ります。住宅会社の事務としてレベルアップを図りたいという方も多いと思います。しかしただ建築士の免許を取っても、設計士や施工管理技士になるわけではないため、あまり実務では必要とされないかもしれません。そこで、事務として取得してレベルアップになる資格についてご紹介いたします。


住宅設計士は現場を知らない!?迷惑な設計士にならない方法

住宅設計士は現場を知らない!?迷惑な設計士にならない方法

住宅設計士は、建築士の資格も持ち、住宅建築の専門家です。しかし、実態としては工事現場の状況や、具体的のどのように工事が進んでいくのかをほとんど理解していない設計士も多いです。設計士は設計が仕事であって、現場見学を何日も行ったり、積極的に現場にくる方というのは少ないです。現場は、現場監督や職人が管理するもので、設計士は行く必要がないと考えている人が多いです。ただ、このような設計士は一般的に現場では迷惑で嫌われます。このような嫌われる特徴、そうならないためにどのような仕事をすれば良いのかをご紹介いたします。


住宅設計士はこれを読め!おすすめ本6選

住宅設計士はこれを読め!おすすめ本6選

住宅設計士は常に新しい情報を取り入れつつ、歴史的建築物などの知識も豊富であることが提案力を身につけるために必要です。設計士として読んで良かった書籍を6つご紹介いたします!本を読む際に、実際に仕事でどのように活かせるのかを考えながら取り入れていきましょう。資格の勉強のようにただ覚えるのではなく、どのようにアウトプットするかが大事です。