住宅建築において、基礎のコンクリート打設は非常に重要な工事のひとつになります。
施工管理としても、建物の強さを左右するコンクリート打設は適切な施工が行われることをしっかりとチェックしなくてはなりません。
しかし、夏のコンクリート打設は通常とは異なる難しさがあります。
この気温の高い時期に施工するコンクリートを「暑中コンクリート」と呼び、施工管理者は施工に向けて対策を講じる必要があるなど、とくに注意が必要です。
そこで本記事では、施工管理者が注意するべき「暑中コンクリート」について、リスクと対策をご紹介したいと思います。
暑中コンクリートとはなに?
暑中コンクリートとは、おもに日平均気温の平年値が25℃を超える期間に施工するコンクリートのことをいいます。
コンクリートは、セメントと水の化学反応である「水和反応」により、一定の時間をかけて硬化します。
しかし気温が高い環境で施工すると「水和反応」が活発になり、通常よりも硬化が早まるのです。
硬化が早まることによって、施工は難しくなり、また問題が生じる可能性も高まります。
よって、施工管理者は、品質を守るためにもしっかりと対策を講じる必要があるのです。
暑中コンクリートのリスクについて
暑中コンクリートには、想定されるいくつかのリスクがあります。
それらリスクのなかでも代表的なものは以下の2つです。
- スランプロス
- コールドジョイント
■スランプロス
まずスランプとは、コンクリートの「柔らかさ」を知るための指標です。
柔らかくなるほど作業効率が高まりますが強度は低くなります。一方、硬くなるほど作業効率は悪くなりますが、強度は高まります。
そのため、スランプ値には規定が設けられており、スランプ試験で数値化して規定値が守られていることを判断するわけです。
そして、コンクリートは製造の直後から硬化が始まりますが、その硬化が進む程度のことを「スランプロス」といいます。
暑中コンクリートは「スランプロス」が大きくなりやすく、施工の段階で凝結が進行してしまい作業効率を低下させることがあります。
作業効率の低下はそのまま品質の低下につながることから、「スランプロス」は大きなリスクとなるわけです。
■コールドジョイント
「コールドジョイント」とは、先に打ち込んだ層と後から打ち込んだ層が一体化できない現象のことです。
通常は、重ねた部分に対し振動棒(バイブレーター)を挿入し一体化することで強固な構造物がつくれます。
ところが、暑中コンクリートは硬化の進行が速いため、間隔が長くなると一体化できずに継ぎ目が生じてしまいます。
「コールドジョイント」が生じると、十分な強度が得られない可能性があったり、完成後の劣化を早めたりしますが、これらは重要構造をつくるうえで大きなリスクです。
暑中コンクリートの対策について
暑中コンクリートは、リスクがともなうため施工管理者によって万全の対策を講じたうえで施工を行わなければなりません。
施工管理者が行うおもな対策とは以下の通りです。
- 打ち込み時間を厳守する
- 打ち込み後の養生に配慮する
■打ち込み時間を厳守する
コンクリートの打ち込み時間には、規定が定められています。
とくに気温が高くなる時期は、硬化が早く、間隔が空き過ぎると一体化された構造物ができなくなるため時間も短くなります。
規定されている時間とは、以下の通りです。
- 外気温が25℃以上のとき、練り混ぜから打込み終了まで90分以内
施工管理者は、以上の時間が厳守されるよう計画を立て、生コン工場や施工業者などと事前に打ち合わせを行うことが重要になります。
■打ち込み後の養生に配慮する
コンクリート打設後は、急激な乾燥によるひび割れなどの症状を抑えるため、速やかに養生を行う必要があります。
また養生は、乾燥による影響を避けるために湿潤状態に保つことがポイントです。
施工管理者は、打ち込み後の養生が適切に行われるよう指示をすること、そして指示通りの施工が行われているかチェックすることが重要になります。
まとめ
暑中コンクリートは、適切な施工が行われないと品質に影響を与えるため、施工管理者の責任において万全の対策を講じなければなりません。
コンクリートが硬化してからでは遅く、万が一問題が生じた場合の処置も難しいことから、事前の準備が非常に重要になります。
施工管理者は、やるべきこと確実に行って、品質の確保を図りましょう。