「コーキング」と「シーリング」は、工事現場でよく使われる言葉ですが、これらにどのような違いがあるのか、よくわからないという人も少なくないでしょう。
結論からいうと、「コーキング」と「シーリング」はまったく同じものと考えて差し支えありません。
では、同じものであるにも関わらず、なぜ呼び方が変わるのでしょか?
そこで本記事では、「コーキング」と「シーリング」の呼び方について、どうして複数存在するのか、また、材料の種類や用途などもご紹介したいと思います。
コーキングとシーリングは同じもの
コーキングとシーリングは、いずれも目地や隙間に充填するペースト状の材料のことであり、またその作業を指していいます。
コーキングは、英語の「caulk(コーク)」の「隙間をふさぐ」という意味から、そしてシーリングは英語の「seal(シール)」の「密閉する」という意味から用いられています。
以上のように、これらはほとんど同じ意味を有するものです。
また、工事現場においても、会社や人によって呼び方が違っていても同じ意味として使われています。
■日本工業規格(JIS)の区分について
日本工業規格(JIS)では、コーキングとシーリングについて以下の規定があります。
・油性コーキング材
展色材と鉱物質充填剤を混合して製造したペースト状のシーリング材。
相対変位の小さな目地のシールに使用される。
・シーリング材
構造体の目地、間隙部分に充填して防水性、気密性などの機能を発揮させる材料。
以上のように、コーキングについては「油性コーキング材」の規定となっていることから、油性のものはコーキング、それ以外はシーリングとする見方もあります
しかし「油性コーキング材」は、近年、利用が縮小していることから、2004年に規格は廃止となっています。
つまり、コーキング工事およびシーリング工事で使われる材料は、呼び方に関わらずその多くが「シーリング材」なのです。
材料の名称が違っていても作業の内容に大きな違いはないため、呼び方も混在しているのかもしれません。
■材料メーカーの商品名や工事の呼び方について
コーキングやシーリングの材料の商品名について、メーカーごとに統一されていない点も特徴として見られます。
例えば、商品名には「シール」「シーラント」シーラー」「コーク」など、複数の言葉が使われてれます。
つまり、コーキングやシーリングの材料は、統一されたものはなく、さまざまな名称で販売されているのです。
また、施工する立場においても、コーキング工事やシーリング工事といった複数の呼び方が存在しています。
しかし、これらは、同じ内容として扱われることが一般的です。
コーキングやシーリングの種類と用途とは
コーキングおよびシーリングで使われる材料には、いくつかの種類があり、用途によって使い分けられています。
おもな種類と用途について、簡単にご紹介いたします。
■シリコン系
「シリコン系」は、非常にコストが安いこと、耐水性や耐候性に優れていることなどの特徴があります。
しかし、塗装ができないため、例えば外壁のような塗装仕上げとなるような場所には適しません。
おもな用途は、水回りの隙間への充填やガラス材の目地充填などです。
■変性シリコン系
「変性シリコン系」は、塗装ができること、硬化後も優れた弾力性を保ち周囲の動きに追従できることなどの特徴があります。
しかし、材料コストは「シリコン」よりも割高にはなってしまいます。
おもな用途は、コンクリートやタイル、サッシ廻り、その他一般建築物の目地充填などです。
非常に用途が幅広く、どのタイプを使えばよいのか迷う場合は「変性シリコン系」を選んでおけば間違いは少ないといわれています。
■ウレタン系
「ウレタン系」は、塗装ができること、耐久性が高いこと、そして密着性に優れることなどの特徴があります。
しかし、紫外線には弱いため、外部で使用する場合は、仕上げに塗装を施す必要があります。
おもな用途は、コンクリートやモルタルのひび割れ補修やその他一般建築物の目地充填などです。
■アクリル系
「アクリル系」は、塗装ができること、そして材料コストが安いことなどの特徴があります。
しかし、劣化で痩せやすく、また紫外線には弱いため外部で使用する場合は仕上げに塗装を施す必要があります。
おもな用途は、ALC外壁の目地充填やコンクリートやモルタルのひび割れ補修などです。
■ポリサルファイド系
「ポリサルファイド系」は、耐久性や耐熱性に優れること、そしてゴミやほこりが付着しにくいことなどの特徴があります。
しかし、柔軟性に少し欠けるため、動きの大きな素材に対する使用には適しません。
おもな用途は、石目地やサッシ廻りへの充填などです。
まとめ
コーキングとシーリングは、呼び方は違っていても同じ意味として用いられています。
一般の人にとっては混乱することもありますが、工事現場ではどちらを使用しても意味を取り違えることはほとんどありません。
ただし、用途によって材料の種類を変える必要があることは知っておくとよいでしょう。