住宅にはさまざまな建材が使用されています。
とくに内装の壁仕上げとして一般的に多く使われているのは「クロス(壁紙)」になりますが、古くから使われてきた「塗り壁」も近年になって広く見直されています。
というのも、特有の風合いを感じられること、そして日本の風土に適した機能を有していることなどがおもな理由です。
そこで本記事では、住宅の内装仕上げ「塗り壁」について、種類や特徴などを徹底解説したいと思います。
そもそも塗り壁とは
塗り壁とは、おもに自然素材を使い、コテ塗りなど左官技術を用いて施工する伝統的な仕上げ方法です。
クロス仕上げなどが「乾式工法」と呼ばれることに対し、塗り壁は「湿式工法」呼ばれています。
なお、「乾式工法」とは水を使わず乾燥した材料を施工する方法であり、「湿式工法」とは水を使い湿潤した材料を施工する方法です。
塗り壁となる仕上げ材にはさまざまな種類がありますが、いずれも左官職人が現場で練り混ぜて塗り付けの作業を行います。
また、コテ波仕上げや扇仕上げ、ハケ引き仕上げなど、人の手によってつくられるパターンが、他にはない特有の風合いを楽しめます。
塗り壁の種類とは
内装仕上げとしての塗り壁には、多くの種類があります。
塗り壁のおもな種類は、以下のようなものが挙げられます。
- 土壁
- 砂壁
- 漆喰
- 珪藻土
■土壁
土壁とは、土とワラ、砂、水などを混ぜ合わせてつくる塗り壁材のことです。
古くから日本の家屋に使われてきた伝統的な工法ですが、近年では非常に少なくなっています。
■砂壁
砂壁とは、砂と糊剤などを混ぜ合わせてつくる塗り壁材のことです。
土壁同様に古くから日本の家屋に使われてきた伝統的な工法であり、また近年では非常に少なくなっています。
粒子の小さな砂を混ぜ合わせていることから、なめらかな仕上がりが特徴となります。
■漆喰
漆喰とは、消石灰と砂やノリ、スサ、水などを混ぜ合わせてつくる塗り壁材のことです。
古い城の壁の多くに使われていることから、日本建築の伝統的な仕上げ方法といえます。
主成分である消石灰は、二酸化炭素と反応して硬化するため、施工して時間が経過するごとに強度を増す性質があります。
■珪藻土
珪藻土とは、海に生息する植物性プランクトンであるケイソウの死骸が堆積してできた塗り壁材のことです。
多孔質な素材であり、吸湿性を活かしたバスマットなども人気となっています。
塗り壁の特徴
塗り壁は、主流であるクロス仕上げとはまったく異なる特徴があります。
職人の手作業による特有の風合いもさることながら、いくつもの優れた機能を有していることも大きな特徴となっています。
塗り壁のおもな特徴とは以下の通りです。
- 調湿性
- 防火性
- 断熱性
- 抗菌・抗ウィルス性
■調湿性
塗り壁は、調湿性を有していることが特徴で、なかでも珪藻土は、とくに優れた性能を発揮します。
調湿性とは、湿度の高い環境で吸湿し、湿度の低い環境で放湿することにより、湿度の安定化を図る性質のことです。
この調湿性は、日本の風土に適した性質であり、生活を快適なものにするには必要な要素となります。
■防火性
塗り壁は、防火性を有していることが特徴です。
万が一の火事のときでも延焼を防げることは、住宅の機能として欠かせない要素となります。
また、自然素材であることから、火事が起こった場合も、有毒ガスを発生させることがありません。
■断熱性
塗り壁は、断熱性を有していることが特徴です。
塗り壁の内部には動かない空気室が無数にあるため、熱の移動を効果的に抑えることで性能を発揮します。
住宅の断熱性が有効に機能すると、室内温度が安定し、快適性の向上やランニングコストの抑制が図れます。
■抗菌・抗ウィルス性
塗り壁は、抗菌・抗ウィルス性を有していることが特徴で、なかでも漆喰は、とくに優れた性能を発揮します。
漆喰の主成分である消石灰は強いアルカリ性を示しますが、細菌やウィルスなど多くの微生物は、アルカリ性に対する適応が難しく活動が抑制される特徴があります。
そのため、近年では、細菌やウィルスなどの影響をできるだけ避けるといった観点からも、広く注目を集めている素材です。
まとめ
内装の塗り壁は、特有の風合いとともに、優れた機能を発揮する仕上げ方法です。
また、左官職人による手作業であることから、ほかにはない空間づくりができることも大きな魅力といえるでしょう。