転職したいと決意したら、勤務先を退職するための手続きが必要となります。
日本では、憲法により「職業選択の自由」が保障されているため、勤務先に退職届を提出するなど何らかの意思表示をすることで退職できます。
とはいえ、意思表示をすればいつでも辞められるのかといえば、必ずしもそうではありません。
では、希望する退職日のどれくらい前に意思表示をする必要があるのでしょうか?
そこで本記事では、勤務先へは退職を希望する何日前に意思表示を行えばよいのか、またどのような方法で申し入れるとよいのか解説したいと思います。
退職届はいつまでに提出すればよい?
まず結論として、法律では退職の14日前に意思表示をすれば有効とされています。
その法律とは、民法627条「期間の定めのない雇用の解約の申入れ」になります。
民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
なお、14日とは、意思表示を行った日、退職日、休日などすべてを含めた日数となります。
■雇用契約期間の定めがある場合は適用されない
民法にある通り、退職したいという意思表示は基本的にいつでも可能であり、またその日から14日経過することで退職できます。
ただし、雇用契約に期間の定めがある、いわゆる「有期雇用契約」の場合は、やむを得ない事由がない限り、契約途中の退職はできないとされています。
よって、「有期雇用契約」に相当するパートやアルバイト、あるいは契約社員などは注意が必要です。
また、その他にも、年俸制など6ヶ月以上の期間で報酬の定めがある場合は、3ヶ月前の意思表示が必要となります。
■基本的には就業規則に従うべき
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する会社は、「就業規則」を作成しなければならないことが定められています。
「就業規則」の内容は会社ごとに異なりますが、退職の申し出についてのルールを定めている場合もあります。
もちろん「就業規則」よりも民法の拘束力が優先されるため、会社のルールを無視して14日で退職することは可能です。
とはいえ、1人の退職者が生じたときには、その業務を引き継ぎを行ったり、あるいは新しい人を補充したりするなど、会社としても何らかの対応をしなくてはなりません。
そのためには一定の時間が必要であり、そのことを見据えて期間を設定していると考えられます。
よって、転職活動を行うときには勤務先の「就業規則」を確認し、できるだけそのルールを守ることが円満に退職するうえで重要になるでしょう。
退職の意思表示は「退職届」?
退職を決意したら、勤務先への意思表示が必要になります。
意思表示は口頭でも効力を発揮しますが、その他にも「退職願」や「退職届」を提出するという方法もあります。
しかし、「退職願」と「退職届」では意味合いが異なるため注意が必要です。
これらの違いについて、それぞれ解説いたします。
■退職願とは
退職願とは、退職を願い出ることを意味し、雇用主に対し退職を認めてもらうための文書となります。
そのため、あくまでも退職を希望していることを伝えるものであり、基本的に承諾を待つ形となります。
その後は会社側との話し合いにより、退職に向けた手続きに移ることもあれば、逆に撤回することも可能です。
また、退職が決まれば、会社側から改めて退職届の提出を求められる場合もあります。
■退職届とは
退職届とは、退職すること、即ち雇用契約を解除することを申し入れるための文書となります。
退職届を提出し、会社側が受理すると、その時点で効力が生じて退職が決定することになります。
そのため、提出した後は、原則として撤回できないと考えておいたほうがよいでしょう。
つまり、退職の意思が固く、引き留めにも応じるつもりがないケースでは、初めから退職届を提出すれば、退職願よりもその後の時間を短縮できるということです。
まとめ
転職活動をするときは、退職の意思表示が必要となります。
そして、それから最短で14日で退職することが可能です。
しかし、会社や取引先、また同僚などに迷惑をかけることなく円満に退職するためにも、ある程度余裕をもって取り組むことが重要になるでしょう。