建設業界の労働災害は、減少傾向にあるとはいえ他の産業と比べても多く発生しています。
また、工事現場で作業に従事する人は、労働災害にいたらないまでも「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりといった経験は少なからずあるでしょう。
このような、つい見過ごしてしまいがちな「ヒヤリハット」を認識し、危険の芽を摘み取ることが労働災害を防止するうえで重要になります。
そこで本記事では、建設業界の「ヒヤリハット」を認識することの重要性について、事例を交えながらご紹介したいと思います。
建設業のヒヤリハットとは?
建設業の「ヒヤリハット」とは、労働災害にいたらないまでも、作業中に「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりなどの危険を感じた事象をいいます。
建設業界は労働災害が比較的多く発生しており、その対策は重要なテーマのひとつとなっています。
労働災害を防ぐための対策にはいろいろありますが、なかでも施工管理者が現場に潜む危険を取り除くことによる安全な環境づくりはきわめて重要です。
また作業従事者が危険な行為をしないこと、そして危険を察知し回避することなども重要になります。
しかし、工事に関わる人の安全に対する意識が低いままでは実現できません。
そのため、安全教育により、安全への意識レベルを高めたうえで作業に従事することがポイントとなるのです。
安全教育は、会社ごとに内容は異なりますが、効果的な方法のひとつに「ヒヤリハット」の共有があります。
「ヒヤリハット」という比較的小さな危険を防ぐことの重要性について詳しく解説いたします。
■ハインリッヒの「1:29:300の法則」について
「ヒヤリハット」の重要性を知るうえで指標となるものに「ハインリッヒの法則」があります。
「ハインリッヒの法則」とは、5,000件以上にものぼる労働災害事例を根拠とし、事故や災害の傾向について具体的に示されたものです。
その内容とは以下の通りです。
- 1件の重大な事故・災害の背後には、29件の軽微な事故・災害、さらには300件の「ヒヤリハット」がある
つまり、重大な事故や災害を防ぐには、そこにいたるまで非常に多く発生する「ヒヤリハット」を防ぐことがポイントになるということです。
■「ヒヤリハット」を共有する
重大な事故を防止するには、工事現場で頻繁に起こっている「ヒヤリハット」を認識し、それらに対処することが重要になります。
その方法として有効となるのが、現場に関わる人たちで「ヒヤリハット」の事例を共有することです。
おもに、安全会議など関連業者が集まる場を使い、「ヒヤリハット報告書」で事例を挙げて原因や対策を検討します。
「ヒヤリハット報告書」は、会社ごとに内容は異なりますが、いつ、どこで、誰が、なにを、どうして、どのように起こったのかなど、より具体的に記載することが重要です。
そして、その事例をもとに原因や対策を検討し、速やかに現場へ反映させる必要があります。
以上のように「ヒヤリハット」を共有することで、いたるところに危険が潜んでいることを認識できるため、事故を未然に回避できるようになるわけです。
たいしたことはないと思っていた「ヒヤリハット」も、多くの人と共有することで安全に対する意識は確実に向上するでしょう。
建設業のヒヤリハット事例について
こちらでは、建設業の「ヒヤリハット」について、とくに住宅建築によくある事例についてご紹介したいと思います。
■ヒヤリハット事例:転落・墜落
- 住宅の屋根工事で足が滑り、転落しそうになった。
屋根の上での作業は、危険がともなうだけでなく重大事故にもつながりやすいため、万全の対策が必要です。
勾配によっては屋根足場を設置したり、また親綱を張り安全帯を装着して作業を行ったりすることなどを検討します。
また作業者は、滑らない靴を使うこと、そして雨が降って滑りやすい場合などはとくに細心の注意をはらうことが重要です。
■ヒヤリハット事例:転倒
- 大工工事中に床に置いていた建材につまずいて転倒しそうになった
大工工事中は、周辺が雑然となりやすく、床面などにものが置いてあっても気が付かない場合があります。
ひとつの作業が終わったら、移動の妨げにならないよう片づけることを心掛ける必要があります。
また、接触するとケガをするような工具などは床面に置かないようにすることも重要です。
■ヒヤリハット事例:飛来・落下
- 建て方工事の玉掛作業中にワイヤーが切れて吊り荷が落下した
玉掛で使用するワイヤーは消耗品です。
定期的に、そして作業前には断線や腐食、摩耗などはないか必ず点検し、危険性のあるものは使わずに廃棄する必要があります。
また、吊り荷の下に人が入らないよう、誘導員を配置して注意を促すことも重要です。
まとめ
建設業界に就く場合は、労災事故を防止するための安全対策は避けて通れません。
そのなかでも効果的なのは、「ヒヤリハット」事例を共有することで安全意識を高め、事故を回避するという方法です。
また、とくに施工管理は責任が重大であり、妥協せず、毅然と対応することがきわめて重要になるでしょう。
※この記事はリバイバル記事です。