住宅の建設工事でよく使用する材料のひとつにコンクリートがあります。
コンクリートは、基礎など重要な構造をつくる材料として知られていますが、「捨てコンクリート」という使い方も有効です。
しかし、「捨てコンクリート」とはどのようなものなのか、よくわからないという人も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、「捨てコンクリート」とはどのような使い方をするのか、またどのような役割があるのかなど、詳しく解説したいと思います。
捨てコンクリートとは
基礎工事では、まず掘削を行い、砕石を敷いた後に50mm程度のコンクリートを流し込んでおくことがあります。
この、あらかじめ流してつくるコンクリート部分を「捨てコンクリート」といいます。
「捨てコンクリート」は、その名の通り、捨てるものであり、構造として求められる強度を必要としません。
そのため、鉄筋を入れない無筋コンクリートであることが一般的です。
以上のように、一見「つくる必要ないのでは?」とも思えるものですが、実は、この後の工程をスムーズに進めるうえで、重要な役割を担います。
捨てコンクリートのおもな役割について
捨てコンクリートは、建物の強度に影響を与えるものではなく、その後の工程において作業効率を高め、よりよい品質を確保するために行うものになります。
捨てコンクリートの役割とは、以下の通り大きく3つです。
- 墨出しをしやすくする
- 高さの基準となる
- 安定した下地となる
■墨出しをしやすくする
捨てコンクリートは、墨出しを行ううえで非常に適した下地となります。
建物の基礎は、必ず正確な位置につくらなくてはなりませんが、そのためには、設計図面の指示通りに墨出しを行うことが重要です。
基本的に墨出しは、基礎の通り芯などの位置を出すために行います。
しかし、後になって消えたり、あるいは動いたりすると、完成後に十分な品質を確保することは難しいかもしれません。
その点、捨てコンクリートは、一度墨出しを行った後は消えにくく、また動くこともないため、正確な位置を確定しやすくなるわけです。
この墨出しで引いた線を地墨といい、これを目印として鉄筋を配置して、組立てを行うことになります。
■高さの基準となる
建物をつくるとき、必ず高さを決めて始めなければなりませんが、捨てコンクリートをつくっておけば、その基準として機能します。
おもに、建物の高さの基準点は、ベンチマークといい、マンホールや境界杭など位置が動かない場所に定めておくことが一般的です。
そして、捨てコンクリートは、ベンチマークを基に算出し、適正な高さでつくることが重要になります。
捨てコンクリートをつくっておけば、その後工程の高さも定めやすくなり、効率が高まってスムーズに進められるようになります。
ただし、基準点はあくまでもベンチマークであり、捨てコンクリートの高さを間違えてしまうと、建物へも影響が生じる可能性がある点では注意が必要です。
■安定した下地となる
捨てコンクリートは、その後工程となる鉄筋および型枠などの下地として有効に機能します。
捨てコンクリートをつくった後、地墨をもとに鉄筋を組立てますが、このときの鉄筋は垂直性が重要になります。
というのも、垂直性が十分でないと鉄筋と型枠のかぶり厚さが確保できなくなることがあるためです。
かぶり厚さが不足すると、コンクリートの寿命を縮める原因にもなることから、適正に確保しなくてはならないことが法律で定められています。
そのため、捨てコンクリートを設けることで、鉄筋や型枠を垂直に立ち上げやすくなり、また組み立て後にも安定を得やすくなるのです。
また、施工時にも職人の足場となり、作業性を高められることも捨てコンクリートの役割のひとつです。
まとめ
捨てコンクリートは、建物の強度に関わる部分ではありません。
基本的に建物の品質を決める要素ではなく、作業効率を高め、そして施工精度を高めることがおもな目的となります。