アイアンショックによる約20%価格上昇
アイアンショックによって、住宅の外壁に用いられる金属サイディングが17%の引き上げを行なった会社もあります。約20%の価格上昇を突然行うということは、異例中の異例です。鉄鋼製品も、1トン当たり1~2割の価格上昇となり、製品によっては5,6万円も上乗せされるものもあります。これらは、1㎡あたりの部材コストが数百円上昇してしまうことになります。
■下請け業者の悲鳴
各資材メーカーは、鋼材価格の上昇に伴い、販売価格を上げています。住宅価格がその分上がることはもちろんですが、住宅価格を上げすぎると、住宅の買い控えが生じます。そこで、建築業界は下請け構造になっているため、末端の下請け業者ほど安く買い叩かれてしまいます。
自社で建材の発注から施工まで行っている、地元の一人親方や小規模の職人集団は、発注元の金額に合わせるために人件費を削るしかありません。しかし、それも持たず、疲弊し潰れていってしまう会社も出てくるでしょう。
鉄鉱石は100%輸入
日本は、鉄鉱石(鋼鉄を造る高炉での原料)を100%輸入に頼っており、海外市場での価格の影響をそのまま受けてしまいます。世界銀行が公表する国際取引価格によると、新型コロナウイルスが流行する2019年12月と比較して、2021年6月には鉄鉱石の価格が130%近く増額になっています。
鉄スクラップも100%の増額、鋼材に関しては5~15%の増額となっています。
原料相場が2020年前半に上昇トレンドに入り、その半年遅れで鋼材価格も上昇しています。リーマンショックの際にも、原料価格が上昇してから1年後に鋼材価格が上がってきていました。今回のアイアンショックの影響では、鋼材価格はまだまだ上がる可能性もあります。
住宅建築コスト水準は、横ばい
ここまで、原料価格や鋼材価格が急騰していると紹介しました。しかし、実際の住宅建築コストは、2020年1月から2021年9月までほぼ横ばいとなっているようです(国土交通省 建築着工統計)。これは、先述した、下請け業者への経費の削減で、利益を削っていることが原因と考えられます。
例えば、特に鋼材を使用するゼネコン大手4社の大林組、大成建設、鹿島建設、清水建設は約50~90%の減益となっています。利益を削り、経費削減を行うことで、建築コストを下げているようです。これらの企業は住宅会社ではありませんが、住宅会社も同じような状況に陥っていると考えられます。
しかし、建設会社で経費を削減し続けることにも限界があるため、住宅建築コストは徐々に上昇していくと予想されます。2006年から2008年にかけて鋼材価格が高騰し2009年に下落した際にも、建築コストは2009年にピークを迎えて、2010年に下落しています。つまり、1年遅れで住宅建築コストに影響がある可能性が高いです。
リフォーム業などは見積価格が上昇
住宅建築コスト水準は横ばいであっても、お客様に直接販売を行うリフォーム業などは見積価格が上昇傾向にあります。リフォーム業は、仕入れから施工までを一括して行い、職人を自社で抱える場合と下請けに流す場合がありますが、どちらの場合でも経費を吸収できるほど余裕がないため、お客様への見積もりが高くなります。
建材価格が10~20%の上昇に伴い、施工価格も10%ほど上乗せする必要が出てきます。金属サイディング、金属屋根などは多くの材料を使うためその影響も強く出ます。石油価格の上昇により、塗料価格も10~20%上昇しています。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で、一旦下落し、需要が減った状態から、中国・アメリカでの急激な需要増によって、アイアンショックが生じています。鉄鉱石などの原料の高騰に伴い、鋼材価格も上昇しています。日本の場合は、鉄鉱石を100%輸入に依存しているため、国産材を使用するという選択肢もなく、対抗手段がありません。
住宅建築コストは今の所横ばいですが、元請業社も利益を削りながら、下請け業社はさらに悲鳴をあげている状況です。アイアンショックの住宅建築費用への影響は、鉄鉱石原料の価格推移の影響の1年後に出てくる恐れがあるため、2022年もしくは2023年に住宅コストが高騰する可能性もあります。