建設現場では、さまざまな職種の人が協力しながら、ひとつの建築物をつくりあげます。
いずれも重要な役割を担いますが、とくに危険が伴う作業については専門的な技術と知識を有していることが求められます。
その作業のひとつが「玉掛け」です。
「玉掛け」とは、おもにクレーンなどの吊り荷を掛けたり外したりする作業のことをいいます。
しかし「玉掛け」は、危険が伴うことから、誰にでもできる作業というわけではありません。
そこで本記事では、「玉掛け」に関する仕事内容について、また必要となる資格などを徹底解説したいと思います。
玉掛けの仕事内容とは?
玉掛けとは、クレーンなどで材料搬入を行うとき、ワイヤーロープなどの玉掛用具を使い、材料をフックに掛けたり外したりする作業のことをいいます。
例えば、木造住宅の建て方工事では、柱や梁などの材料を組み立てる順番にクレーンで吊って作業員の位置まで運びますが、このときに必要となるのが玉掛け作業です。
そして、玉掛け作業は、基本的に有資格者でなければできません。
また、クレーンオペレーターも玉掛け作業を行う場合は、クレーンの免許や資格とは別に玉掛けの資格が必要となります。
■玉掛け作業のポイントについて
玉掛け作業を行う場合は、安全確保のため適切に行われる必要があります。
玉掛け作業の重要なポイントについて、簡単に解説いたします。
玉掛用具の準備と点検
作業にあたっては、必要となる玉掛用具を準備し、事前に必ず点検を行うことが重要です。
吊り荷の重量やサイズに適しているか、またワイヤーロープに損傷はないかなど、問題がないことを確認して作業を行います。
作業前の打ち合わせ
まず、現場監督は、玉掛け作業者やクレーンオペレーター、運送業者、交通誘導員などに対し、計画書に則って安全確保のための指示を出す必要があります。
また、玉掛け作業者は、クレーンオペレーターとの連携がきわめて重要で、誘導の方法や緊急時の対応について、合図などの確認を事前に行います。
適切な玉掛け作業
玉掛け作業は、必ず適切な方法で行わなければなりません。
例えば、クレーンの巻き上げにより吊り荷を床から離すことを「地切り」といいますが、「地切り」の前後でしっかりと安全確認をすることがポイントです。
「地切り」前は、ワイヤーが張った状態でいったん止め、問題なく荷掛けされていることを確認します。
そして、「地切り」後にも再度止めて、荷掛けの状態や安定性を確認します。
また、吊り荷が移動するときには、その下に人が入らないようにすること、そして玉掛け作業者は事前に打ち合わせた合図通りに目的地まで吊り荷を誘導することなどが重要です。
■玉掛け作業のリスクについて
玉掛け作業には、一定の危険が伴います。
例えば、誤った掛け方をしてワイヤーロープから外れたり、あるいはワイヤーロープが切断したりするなどして、吊り荷が落下するケースです。
この場合、材料や建物が損壊する可能性があるだけでなく、人に激突することがあると大事故につながりかねません。
実際に玉掛け作業に関連する死亡事故も多く発生しています。
そのため、玉掛けを行う人は資格取得が必要であり、また現場監督は玉掛けを行う工事に関わる十分な配慮が必要となるのです。
玉掛け作業に必要な資格とは?
玉掛け作業を行うときに必要となる資格は、以下の通りクレーンの大きさによって異なります。
- 制限荷重が1トン未満のクレーン:玉掛け特別教育
- 制限荷重が1トン以上のクレーン:玉掛け技能講習
■制限荷重が1トン未満のクレーン:玉掛け特別教育
まず、制限荷重が1トン未満のクレーンを使用するときの玉掛け作業では、必ずしも有資格者である必要はなく、その代わりに「玉掛け特別教育」を修了していることが望ましいとしています。
しかし、現場によってはクレーンの大きさに関わらず無資格者の玉掛け作業を禁止しているケースも増えており、安全確保のためにも受講しておくことが重要になるでしょう。
なお、「特別教育」は、社内で受講するか、あるいは社外の各都道府県にある登録教習機関で受講することで得られます。
■制限荷重が1トン以上のクレーン:玉掛け技能講習
制限荷重が1トン以上のクレーンを使用するときの玉掛け作業では、「玉掛け技能講習」を受講し、必ず資格を取得しなくてはなりません。
年齢が18歳以上であれば誰でも受験が可能であるため、玉掛け作業を行う可能性のある人は取得しておくとよいでしょう。
なお、「技能講習」は、都道府県労働局長の登録を受けた教習機関で受講し、修了することで得られます。
まとめ
玉掛けとは、クレーンを使用する工事で必要となる作業のことをいいます。
しかし、玉掛作業は、一定の危険が伴うため、現場監督により十分な安全対策を講じたうえで進めていかなくてはなりません。
また、玉掛け作業を無資格者が行うことは違法行為となるケースもあり、その場合は作業者だけでなく事業者にも罰則が科される可能性があります。
必ず必要な資格を取得して作業を行いましょう。