冬季は、寒さの影響によって工事現場でのパフォーマンスが低下するとともに、この季節特有の労災事故が起こりやすくなります。
そのため、冬の工事現場は防寒対策が必須となるのはいうまでもありません。
しかし、ただ重ね着をすればよいというわけではなく、効果を十分に発揮させるにはコツがあります。
そこで本記事では、冬の工事現場の重要テーマである防寒対策について、そのコツをご紹介したいと思います。
工事現場の防寒対策の重要性について
冬の工事現場は、外気温の影響を受けながら作業を行わなければならないケースが非常に多くあります。
しかし、低気温の環境下では筋肉がかたくなることから、どうしてもパフォーマンスが低下してしまいます。
パフォーマンスの低下は、工事の遅れにつながったり、あるいは品質にも影響を及ぼしたりすることがあるため注意が必要です。
また、冬季には、この季節特有の労災事故が起こりやすくなります。
例えば、凍結による転倒や転落、そして換気不足による一酸化炭素中毒などです。
これらは、寒冷な作業環境になってしまうことが原因であるため、作業しやすい環境づくりをすること、そして個人が十分な防寒対策を行うことが重要になります。
そうすることで、パフォーマンスの最大化を図り、労災事故の防止につながるわけです。
工事現場で行う効果的な防寒対策とは?
工事現場で行う防寒対策として基本となるのは、寒冷な作業環境に適した服装をすることです。
寒冷な作業環境に適した服装は、暖かいだけでなく、動きやすいこと、そして汗冷えをしないことなどが重要になります。
これらの条件を満たす効果的な方法として「レイヤリング」という重ね着の考え方があります。
■レイヤリングとは
レイヤリングとは、防寒対策として欠かせない重ね着のことを意味します。
重ね着における大きく3つの層について、それぞれに必要な機能と役割を持たせることで、十分な性能を発揮させるという考え方となります。
レイヤリングの3つの層とは以下の通りです。
- ベースレイヤー
- ミドルレイヤー
- アウターレイヤー
ベースレイヤー
ベースレイヤーとは、最も下層に位置するインナーで、おもに作業によってかいた汗を素早く吸収し、さらに拡散することで汗冷えを防止する役割を担います。
皮膚表面の汗をすぐに乾かすことで保温性を保つという点がポイントとなります。
とくに肌に密着させて吸湿速乾性を発揮するようなポリエステル素材の機能性インナーなどは、現場作業に適しており、おすすめです。
なお、人気のヒートテックは、多少の汗であれば吸湿発熱機能により暖かさを得られますが、能力を超えるほどの大量の発汗があるケースでは、対応できず逆に身体を冷やしてしまう可能性もあります。
ベースレイヤーには、まず吸湿速乾性を重視して選ぶとよいでしょう。
ミドルレイヤー
ミドルレイヤーとは、ベースレイヤーの上層に位置するウエアで、おもに動きやすさと保温性を確保する役割を担います。
また、インナーが吸湿して拡散する汗を効果的に透過させる通気性や速乾性を有していることもポイントとなります。
例えば、フリースなどは、保温性や吸湿速乾性が優れているうえ、軽く動きやすいことから、現場作業に適しており、おすすめです。
ミドルレイヤーは、アウターを脱いで作業することを考えると、厚すぎず薄すぎない動きやすさがあること、そして適度な保温性を確保できるものを選ぶとよいでしょう。
アウターレイヤー
アウターレイヤーとは、最も外側に位置するウエアで、おもに雨や風など外的要因から身体を守る役割を担います。
寒冷な現場環境に対応するためであり、アウターで身体を暖めるというより、どちらかというとミドルレイヤーの保温性を保つことがポイントとなります。
また、作業量や当日の気温などを考慮し、必要に応じて脱いだり、あるいは着たりなどして体温調節を図ることも重要です。
アウターレイヤーは、風雨から身体を守る防水性と、できれば内側から拡散する汗を透過させる透湿性が備わっているものを選ぶとよいでしょう。
■その他防寒アイテムについて
近年では、さまざまな防寒アイテムがあります。
例えば、ネックウォーマーは、工事現場ではよく使われているアイテムのひとつです。
防寒対策は、「首」「手首」「足首」の3つの首を暖めると、高い効果が期待できるといわれています。
なぜなら、これらの場所には大きな血管が通っているため、血流によって全身を効率よく暖められるということがその理由です。
その点、ネックウォーマーは、首回りを効果的に暖められます。
さらに、作業中においても、引っ掛けるリスクが低く安全性が高いことから、現場に適したアイテムといえます。
そして、指先の冷えはパフォーマンスの低下を招くため、作業用手袋は必須です。
作業用手袋には、保温性や吸湿速乾性を備えたものや、滑り止め加工を施しているなど作業性を高めるものが多くあります。
また、工事現場では、指先だけでなく足元も冷えやすいため、靴下も保温性の高いものを履くことが重要です。
足裏を厚くつくっている靴下を履くと地面の冷気をシャットアウトしてくれるほか、さらにレッグウォーマーを着用すると足首も暖められます。
まとめ
冬の工事現場では、パフォーマンスを高め、そして安全を確保するためにも、防寒対策を徹底することが重要です。
ただ、服装を暖かくすればよいということではなく、機能性や役割などを考慮して検討してみるとよいでしょう。