大工は木材を加工しない!?プレカットと手刻み

大工は木材を加工しない!?プレカットと手刻み

建築現場を1から全てを見たことがない方にとって、大工は、木を加工して住宅をうまく組み立てていると考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?一昔前までは、大工が木材を加工し、いわゆる職人作業を行なっていました。しかし、現在は大工は組み立てるだけで、木材を加工するということはほとんどありません。カンナも使いません。現代の建築手法として主流となっている、プレカットの木材や、手作業での木材加工はどのような場面で行われているかご紹介いたします。


木材加工のプレカット、手刻み

住宅や、非住宅分野でも木材は、プレカットの木材が80%以上を占めています。プレカットというのは、pre cut といって、あらかじめ工場でカットされたもののことを言います。

手刻みというのは、大工が現場で木材を加工し、伝統的な建築工法や、木材の独特の風合いを出すために行われます。それぞれの特徴や、メリットデメリットについてご紹介いたします。

プレカットの木材

プレカットの木材は、工場でコンピューター制御された状態でカットされて出来上がります。角材や、角材に継ぎ手・仕口を入れることもできます。工場生産されるため、品質が均一化されるだけでなく、効率的に工事を進めることができます。

現場にプレカットの木材が届きます。そのため、大工は木材加工の作業を行う必要がなく、現場でパズルのように組み立てていけば良いだけになります。現場では、木材加工の作業スペースも限られているため、このように工場でプレカットされている木材が届くというだけで、工事全体の作業スピードを早めることができます。一昔前では、戸建て建築に1年以上かかっていたものが半年未満で終わらせることができるのは、これが一因でもあります。

大工の職人技というものもほとんど必要なくなってきています。大工が1本の木材の性質を見抜き、適材適所で家を建てていくということは必要ありません。均一化された高品質の木材を決められたように組み立てていくだけですので、職人の腕に左右されずに住宅を建てることができます。大量生産しながらも、低価格で効率的に建設作業を行う上で非常に効率的であることがわかります。

プレカット木材のメリット

・工期の短縮
・職人の腕に左右されない
・コストダウン
・対応できる会社が多い
・木材の品質が保証されている

プレカット木材のデメリット

・複雑な加工ができない
・金物の使用が前提
・大工の伝統技術が失われる
・木の独特の風合いは出しにくい

プレカット木材というものは、大量生産用の質の悪い安物というわけではありません。あくまでも効率化されながらも、品質の担保されたもので、住宅の耐久性も大工が手作りしたものよりも高い場合もあります。このような背景を知っていると、工事現場を見た時にどのように作業が進んでいるかを理解しやすいです。

手刻みの木材

伝統的な在来工法では、梁や桁、柱などを継ぎ手や仕口といった凹凸により木材を接合していきます。反対にプレカット木材では、簡単な凹凸加工や、金物を用いて接合していきます。手刻みの木材は、大工の技により加工され、住宅の骨組みとなる部材が作られていきます。

現在では、伝統的な在来工法で建てられる建築物は、神社仏閣、特殊施設などに限られています。宮大工と呼ばれる大工も、手刻みによる木材加工を行なっています。その木材を使う場所によって木材を選定し、曲がり・反り・歪みを調整しながら1本1本の木材を加工していきます。このように加工される木材は、集成材ではなく天然の無垢材で行われることが多いです。集成材はプレカット用の木材として生産されていることがほとんどだからです。

また、手刻みを行なった木材は、使う向きなども考慮されています。例えば、梁や桁は、木の根元を外側に、柱などは木の根本を下にします。乾燥して曲がる木材は、家が内側に締まるように設置、節は見えないように避ける、木の色を周りと合うように使用していくなどの配慮を行います。

手刻みの木材のメリット

・木独特の風合いを活かせる
・丸太の梁、曲がり梁といった加工が可能
・無垢材の使用に適している

手刻みの木材のデメリット

・手間とコストがかかる
・大工の腕に左右される
・対応できる会社が少ない

手刻みの加工がされた木造建築は、日本の伝統家屋の風合いと、現代のモダンな印象も融合できる非常に温かみがありながらおしゃれな印象の住宅にすることができます。また、神社仏閣などのメンテナンスや模造建築に伝統技術を持った大工が必要なことは、言うまでもありません。

現在では、このように手刻みによる木材加工はほとんど住宅で見かけることはありませんが、木造住宅の衣装を凝らしたおしゃれな住宅には不可欠なものともなっているため、近年これらの技術を融合した住宅も建てられるようになってきています。

関連するキーワード


住宅

関連する投稿


【民法改正】契約不適合責任とはなに?瑕疵担保責任との違いは?

【民法改正】契約不適合責任とはなに?瑕疵担保責任との違いは?

2020年の4月より、改正民法が施工されています。 多くの点で改正が行われていますが、住宅の売買に関連する内容として「契約不適合責任」の新設があります。 「契約不適合責任」は、これまでの「瑕疵担保責任」に代わって登場した規定になりますが、どのような内容なのかよくわからない人も多いのではないでしょうか? そこで本記事では、このたびの民放改正により新たに登場した「契約不適合責任」とはどういうものなのか、また「瑕疵担保責任」との違いについても解説したいと思います。


【空き家問題】リスクと活用方法とは?

【空き家問題】リスクと活用方法とは?

現在、住宅業界の課題となっていることのひとつに「空き家問題」があります。 「空き家問題」は、少子高齢化による人口減少の影響から今後もさらに深刻化することが予想されています。 また、空き家を放置することは、周辺環境の悪化などさまざまなリスクがあるため、なんらかの対策が必要です。 このような背景から空き家対策として法的な整備も進んでおり、場合によっては所有者に処分や罰則が科されるケースがあることは注意が必要となります。 しかし、空き家の所有者は、放置することのリスクに対し、どのような対応をすればよいでのしょうか? そこで本記事では、空き家を放置するリスクとおもな活用方法について解説したいと思います。


住宅ローンの定番「フラット35」とは?特徴や銀行ローンとの違い

住宅ローンの定番「フラット35」とは?特徴や銀行ローンとの違い

住宅を購入する際、多くの人が利用する住宅ローンですが、なかでも定番といえるのは「フラット35」になるでしょう。 「フラット35」の最大の特徴は「固定金利型」であることです。 「固定金利型」であることで、借り入れの時点で返済金額がわかり、また計画も立てやすくなります。 また、この他にも民間銀行が取り扱う住宅ローンとは異なる特徴があるため、知識として理解しておくとよいでしょう。 そこで本記事では、「フラット35」の特徴や銀行ローンとの違いについて徹底解説したいと思います。


【住宅建築の基礎知識】セメント、モルタル、コンクリートの違いとは?

【住宅建築の基礎知識】セメント、モルタル、コンクリートの違いとは?

住宅建築においては、非常に多くの建材が使われています。 なかでも「セメント」「モルタル」「コンクリート」については、必ず使用されるポピュラーな建材となります。 しかし、これらがどのような建材なのか、またそれぞれの違いがよくわからないという人もいるのではないでしょうか? そこで本記事では、「セメント」「モルタル」「コンクリート」について、それぞれの特徴の違いなどを徹底解説したいと思います。


プレハブ住宅とはどんな住宅?種類や特徴を解説

プレハブ住宅とはどんな住宅?種類や特徴を解説

戸建て住宅はいくつかの種類に分けられますが、建築するときの工法によっても分類することが可能です。 代表的な工法といえば「木造軸組工法」や「木造枠組壁式(ツーバイフォー)工法」、「プレハブ工法」などが挙げられます。 そして、この「プレハブ工法」で建てられた住宅が「プレハブ住宅」です。 また「プレハブ住宅」は、さらにいくつかの種類に分かれており、それぞれ特徴が異なります。 そこで本記事では、「プレハブ住宅」とは具体的にどのような住宅のことをいうのか、そしてどのような種類や特徴があるのかなど、徹底解説したいと思います。


最新の投稿


【建設業で有利】宅地建物取引士の資格とは?

【建設業で有利】宅地建物取引士の資格とは?

宅地建物取引士は、不動産取引の専門家として欠かせない国家資格で、略称として「宅建士」とも呼ばれます。 この宅地建物取引士は、不動産業界に携わる人にとって必須ともいえる資格ですが、建設業界でも活かせるとして注目されています。 では宅地建物取引士資格は、建設業界でどのように役立つのでしょうか? そこで本記事では、そもそも宅地建物取引士とはどのような資格なのか、また建設業界で働く人が取得することによりどのように役立つのかその理由について解説したいと思います。


【コンクリート技士・診断士】仕事内容や資格試験などを解説

【コンクリート技士・診断士】仕事内容や資格試験などを解説

建物をつくるうえで欠かせない材料のひとつにコンクリートがあります。 コンクリートは、建物の強度を左右する重要な役割を担うため、十分な品質を確保しなくてはなりません。 そのため、コンクリートを取り扱う業務では、高度な専門知識を有する人の存在が求められることが多くなっています。 建設関連の資格は非常に多くありますが、なかでも「コンクリート技士」および「コンクリート診断士」は、コンクリートのスペシャリストとして活躍できる注目の資格です。 そこで本記事では、「コンクリート技士・診断士」の資格を取得することで行える仕事内容や、資格試験の概要についてご紹介したいと思います。


【民法改正】契約不適合責任とはなに?瑕疵担保責任との違いは?

【民法改正】契約不適合責任とはなに?瑕疵担保責任との違いは?

2020年の4月より、改正民法が施工されています。 多くの点で改正が行われていますが、住宅の売買に関連する内容として「契約不適合責任」の新設があります。 「契約不適合責任」は、これまでの「瑕疵担保責任」に代わって登場した規定になりますが、どのような内容なのかよくわからない人も多いのではないでしょうか? そこで本記事では、このたびの民放改正により新たに登場した「契約不適合責任」とはどういうものなのか、また「瑕疵担保責任」との違いについても解説したいと思います。


住宅業界の変化|人手不足、IT技術導入

住宅業界の変化|人手不足、IT技術導入

住宅業界は、人手不足に悩まされ、労働人口減少を食い止めるために様々な施策がなされています。働き方改革や、IT技術導入など、どのようなものが具体的に進んでおり、どのような影響を与えているのかについてご紹介いたします。


【簡単わかりやすい】戸建て住宅工事の検査まとめ

【簡単わかりやすい】戸建て住宅工事の検査まとめ

戸建住宅工事では、様々な検査が行われています。住宅は非常に高価な商品であり、不具合があったときに容易に交換ができないことや、欠陥により人の命に関わることもあるため、法令遵守の求められている基準が厳しいです。義務として行わなければならない基本的検査、義務ではないがより安心した検査となる任意的検査があります。これらについてわかりやすく簡単にご紹介いたします。


最近話題のキーワード

ハウジングインダストリーで話題のキーワード


新築工事 現場監督 施工管理 住宅 利益 営業 職人 資格 現場監理 働き方改革 台風