建設業界はさまざまな課題を抱えていますが、とくに施工管理者にとって最重要といえるのは労働災害を防止するための取り組みではないでしょうか。
施工管理の仕事は、多岐に渡ります。
なかでも、現場に携わる人たちが安全に作業できる環境をつくることは最優先に取り組む必要があり、そしてその取り組みのひとつが「安全パトロール」です。
そこで本記事では、施工管理者が行う「安全パトロール」について、その目的やチェックするべきポイントなどをご紹介いたします。
安全パトロールとは?
安全パトロールとは、労働災害を未然に防ぐことを目的とし、現場内の危険を発見および除去するために行うパトロールのことです。
住宅工事の安全パトロールの多くは、施工管理者や協力業者の担当者など複数人によって行われます。
おもに、会社で定めたチェックシートを基準とし、項目ごとに評価点をつけたり、あるいはできていない項目を減点したりすることにより合計点を算出します。
その合計点をもとに安全に対する取り組みへの評価を行うわけです。
また、危険性がある場合は速やかに是正し、さらに安全パトロールの内容は各業者へ展開して共有を図ることが重要になります。
例えば、チェックシートをメールで関係業者へ一斉送信したり、あるいは安全会議で良い点や悪い点を発表したりするなど、安全面でのルール遵守を促します。
安全パトロールの目的について
施工管理の業務は多岐に渡りますが、とくに重要といえるのは「工程管理」「安全管理」「品質管理」「原価管理」です。
なかでも「安全管理」は、優先的に行うべき業務といってもよいでしょう。
そして、施工管理が行う「安全管理」の最大の目的といえば、労災事故を未然に防ぐことです。
その一環として行われるのが安全パトロールになるわけですが、実施することにより期待できる効果を以下にご紹介いたします。
■現場に潜む危険を確認できる
現場にはあらゆる危険が潜んでおり、それらは安全パトロールを行うことで確認できます。
おもに、チェックシートの項目をひとつずつ確認し、できていない項目を現場に存在している危険として判断できます。
そして、安全パトロールによって顕在化した危険を取り除くことで、安全な環境づくりが可能となるわけです。
また、現場の危険性は工程ごとに変化することでもあり、チェックシートだけで網羅できない場合もあります。
よって、複数の業者による視点から危険性をあぶり出し、それらを共有することが重要になります。
■安全への取り組みが現場に生かされているか確認できる
安全への取り組みは施工管理者として必須ですが、実際の現場に生かされなければ意味がありません。
通常、現場での安全に関するルールは、新規入場者教育やその他安全教育などを通じて共有されます。
また定期的に行われる安全会議などでも、KY活動やリスクアセスメントなどさまざまな取り組みが行われます。
安全パトロールでは、これら取り組みが実際の現場に生かされているのか、確認することが可能です。
生かされていれば、良い例として再共有することでさらに意識向上を図れます。
一方、生かされていなければ是正を促したうえで再発防止を図り、それでも繰り返されるようなら厳罰を科すことも検討する必要があるでしょう。
■現場に緊張感をもたらす
現場で作業する人にとっては、安全のために割く時間は工事を遅らせる原因となる場合があります。
そのため、工事を早く進めたいがあまり、安全が疎かになることも珍しくありません。
また、安全を怠り事故が発生した場合、工事どころではなくなる可能性もあります。
安全パトロールを行うことにより、現場に適度な緊張感をもたらし、安全への取り組みを行わざるをえない状況をつくれます。
安全パトロールのチェックポイント
安全パトロールでチェックしておきたいいくつかのポイントについて簡単にご紹介いたします。
実施するタイミングにより変化しますが、おもなポイントは以下の通りです。
- 危険な状態はないか
- 危険な行為をしていないか
- 現場はきれいか
- 必要な設備、備品は揃っているか
- 搬入通路は確保されているか
- 近隣へ配慮されているか
これら項目以外にも多くのポイントがありますが、とくにしっかりとチェックしておきたいことは、危険な状態と行為についてです。
建築工事中に最も多い労働災害といえば「墜落・転落」になります。
そのため、まずは高所作業における転墜落防止の措置を確実に講じていることが重要なポイントとなります。
例えば、高所作業に欠かせない足場について、手すり設置状況や床の段差および損傷、壁つなぎは適正に設置されているかということなどです。
また危険な行為についても重要なチェックポイントとなります。
例えば、工具を正しく使用しているか、高所作業でのヘルメットや安全帯は適正に使用されているかということなどです。
安全パトロールで危険な状態や行為を発見した場合は、妥協せず、必ず是正する必要があります。
とくに危険性が高く重大な事故につながる可能性があるものは、現場作業を止め、その場で改善することも必要です。
まとめ
安全パトロールは、労働災害を未然に防ぐための取り組みです。
施工管理にとって安全はなによりも優先して行う必要があり、現場に潜む危険を見過ごすことは絶対に避けなければなりません。
現場の安全を確保するうえで安全パトロールは効果的です。
安全パトロールを通じ、現場に携わるすべての人が安全に対する理解を深め、そして共有することが重要になるでしょう。