住宅建築では多くの専門業者が携わりますが、そのひとつに「とび職」があります。
「とび職」とは、おもに高所での作業を担当する人を指していいますが、その華麗な仕事ぶりから「現場の華」と呼ばれることもあります。
しかし「とび職」にもいくつかの種類があることからも、具体的にどのような仕事なのかよくわからないという人も多いのはないでしょうか?
また「とび職」の仕事をするうえで必要な資格はあるのでしょうか?
そこで本記事では、「とび職」とは具体的にどのような仕事内容なのか、資格は必要なのかなど解説したいと思います。
とび職とはどんな仕事?
とび職とは、おもに高所作業に従事する技術職のことをいいます。
とび職という名称で呼ばれるようになったのは江戸時代からといわれており、おもに木造住宅の建築工事に携わる職人であると同時に「火消し」としても活躍していました。
というのも、当時の消火活動といえば延焼を防止する目的で行う破壊消防であり、住宅構造の専門的な知識を生かし解体することにも長けていたためです。
また、現代のとび職はといえば、いくつかの種類に分かれており、それぞれ仕事内容が異なります。
とび職のおもな種類とは以下の通りです。
- 足場とび
- 鉄骨とび
- 重量とび
■足場とび
足場とびとは、高所作業で利用するための足場の設置および解体を行う職人です。
「労働安全衛生法」では、2m以上で行う作業のことを高所作業とし、その高所作業を行う場合は足場を設置しなくてはならないことを義務付けています。
住宅の新築工事では必ず足場が必要となることから、足場とびの需要はきわめて高いといえます。
■鉄骨とび
鉄骨とびとは、鉄骨造の建物の鉄骨組みを行う職人です。
おもに躯体となる構造の組み立てを行いますが、クレーンなどで鉄骨を吊り上げ移動しながらボルトで固定する作業となります。
■重量とび
重量とびとは、建築物の内外へ大型の機械や設備など重量物を搬入や設置、そして解体する職人です。
重量物の移動にはクレーンと専用の道具を使用して行われるなど、非常に専門性の高い作業になります。
とび職になるには資格は必要?
とび職となるために資格は必要ありません。
また、年齢や学歴なども基本的に問われませんが、18歳以下は労働基準法により高所作業の制限が設けられ禁止されている点では注意が必要です。
18歳以下の高所作業の制限とは以下の通りです。
- 高さ5m以上の場所での作業
- 足場の組立、解体、変更などの作業
ただし、18歳以下でも地上または床上での補助作業は行えるため、仕事内容に制限はあるものの、なることは可能です。
また、とび職になるための資格は必要ありませんが、仕事内容によっては取得が必要となる資格や、その他関連する資格は多くあります。
建設業界において、資格は信頼の証であり、また有資格者は重用される傾向にもあるため、できるだけ取得しておくとなにかと有利です。
■資格は大きく3種類
資格はおもに3種類に分けられ、それぞれ効力の大きさが異なります。
その3種類とは以下の通りです。
- 特別教育
- 技能講習
- 免許
特別教育
特別教育は、社内で受講するか、あるいは社外の各都道府県にある登録教習機関で受講することで得られる資格です。
3種類のなかで効力の強さは最も下位に位置します。
技能講習
技能講習は、都道府県労働局長の登録を受けた教習機関で受講し修了することで得られる資格です。
3種類のなかで効力の強さは中間に位置します。
免許
免許は、国家試験を受けて合格することで得られる資格です。
3種類のなかで効力の強さは最も上位に位置します。
■とび職の関連資格
とび職の関連資格には多くの種類がありますが、それらのうち代表的なものをいくつかご紹介したいと思います。
とび職に関連するおもな資格は以下の通りです。
- 玉掛け技能講習
- 足場の組立て等特別教育
- 足場の組立て等作業主任者
- 建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者
- とび技能士
玉掛け技能講習
玉掛けとは、クレーン作業でフックに荷を掛けたり外したりする作業のことをいいます。
玉掛けをするには危険がともなうため、クレーンの制限荷重が1トン以上の場合の玉掛け作業は「玉掛け技能講習」の修了が必要となります。
1トン未満の場合は「玉掛け特別教育」でよいとされていますが、ほぼ使うことのない大きさのクレーンとなるため需要は限定的です。
足場の組立て等特別教育
足場の組立てに従事する場合は「足場の組立て等特別教育」を受講しなくてはなりません。
足場の組立てや解体、変更などの作業を行うには、まず「足場の組立て等特別教育」を受講することが義務づけられています。
足場の組立て等作業主任者
吊り足場や高さ5m以上の足場の組立てや解体、変更などの作業を行う場合、「足場の組立て等作業主任者」を受講した人を作業主任者として配置することが義務付けられています。
なお、取得するには3年間の実務経験が必要です。
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者
高さ5m以上ある建築物の鉄骨の組立てや解体、変更などの作業を行う場合、「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者」を受講した人を作業主任者として配置することが義務付けられています。
この資格も取得するには3年間の実務経験が必要です。
とび技能士
「とび技能士」とは、国家資格の技能検定制度のひとつであり、今回ご紹介している関連資格のなかで最も上位にある資格となります。
取得することで、技能士を名乗ることを許されるなど、国が認めるプロのとび職として活躍することが可能です。
また、「とび技能士」には1級、2級、3級があり、実技試験と学科試験の両方を合格することで得られます。
まとめ
とび職とは高所作業に従事する人を指していいます。
非常に危険性の高い仕事ですが、とくに近年では安全に対する意識が高く、必ず万全の対策を講じたうえで作業を行っています。
基本的に誰にでもなれる仕事とはいえ、専門的な知識と体力が備わっていることが重要になります。
とび職は、建設工事で欠かせないことから、需要も高く、将来性も期待できる仕事といえるでしょう。
※この記事はリバイバル記事です。