建設業界の仕事は、残業が多く休みも少ないなど、いわゆる3K(きつい・きたない・危険)な職場というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか?
実際に業界としてそのような傾向が強いことから、他業界へ若い人材が流れてしまうケースも少なからずあります。
さらに高齢化が加速し就業者数の減少が急速に進むことが懸念されるなか、次世代を担う若い人材の確保は建設業界全体の最優先課題といっても過言ではありません。
人手不足を解消するためにも、建設業界の働き方改革を強力に推し進め、これまでの悪しきイメージを払拭する必要があるでしょう。
このような背景から、国土交通省から建設業界の働き方の指針となる「建設業働き方改革加速化プログラム」が発表されています。
本記事では、「建設業働き方改革加速化プログラム」をもとに、建設業界の働き方がどのように変わっていくのかご紹介したいと思います。
建設業界の働き方改革について
国土交通省から「建設業働き方改革加速化プログラム」が発表され、働き方に関する具体的な方向性が明らかとなっています。
大きな柱は以下の3つです。
- 長時間労働の是正
- 給与・社会保険
- 生産性向上
報道発表資料:「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定~官民一体となって建設業の働き方改革を加速~ - 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000561.html国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。
■長時間労働の是正
「長時間労働の是正」は、常態化している建設業界の長時間労働を是正するための取り組みです。
2019年の労働基準法改正により、残業時間の上限が罰則付き(6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)で定められました。
おもな上限時間は以下の通りです。
- 月45時間
- 年間360時間
- 特別の事情があって労使が合意する場合に年間720時間
なお建設業界については、他の業界と比べて長時間労働の傾向が強いことから5年の猶予が与えられ2024年4月からの施工となっています。
しかし「建設業働き方改革加速化プログラム」では、2024年からの時間外労働の上限規制を待たずに「長時間労働是正」や「週休2日の確保」を図る取り組みを進めています。
例えば、公共事業における週休2日工事の件数を増加させることや、週休2日制に取り組む企業を積極的に評価する仕組みをつくることなどです。
また「一般社団法人日本建設業連合会」においても、適用までの間を時間外労働の削減の目標を設定し段階的に取り組む旨の発表もありました。
そのおもな内容は以下の通りです。
- 2019~2021年度:年間 960 時間以内(月平均 80 時間)
- 2022~2023年度:年間 840 時間以内(月平均 70 時間)
- 2024年度適用:年間720 時間以内(月平均 60 時間)
一般社団法人日本建設業連合会(日建連)は建設業界を代表する団体として、建設業に関係するさまざまな課題に取り組み、建設業の健全な発展に力を注いでいます
以上のように、建設業界でも確実に働き方改革は進んでおり、少なくとも2024年4月からは目に見える形で残業時間は削減されることになるでしょう。
■給与・社会保険
「給与・社会保険」は、技能と経験に見合った給与体系の構築と社会保険加入を徹底させるための取り組みです。
給与の取り組みについては、技能者の能力評価制度である「建設キャリアアップシステム」を立ち上げ、すでに運用が始まっています。
「建設キャリアアップシステム」とは、技能者の資格や社会保険加入状況、経歴などのデータを蓄積し、統一された基準をもとに評価を見える化するという制度です。
そうすることで技能士のやりがいへとつながり、また評価が給与に反映されるなどの活用も期待されます。
社会保険の取り組みについては、未加入業者には建設業の許可や更新が認められないといったペナルティ制度の導入などです。
■生産性向上
「生産性向上」は、働き方改革によって労働時間を短縮させながらも業績を確保していくためITを活用するなどで効率化を図る取り組みです。
例えば、生産性向上を積極的に取り組む建設会社を後押しする制度の確立や、建設業許可申請手続きの電子化などが挙げられます。
また、IoTやその他新技術の導入によって施工品質の向上や省力化を積極的に図ることなどは、人材不足を補う意味でも必要になるでしょう。
まとめ
建設業界の働き方改革は、徐々にではありますが確実に進んでいることは間違いありません。
とくに次世代の担い手を確保するためにも業界全体で取り組んでいく必要があります。
これから建設業界で働きたいと思っている人にとっても、労働環境の整備は重要なポイントになります。
そのうえで、やりがいがあり、正当な評価による給与体系の確立が実現されると魅力の大きな業界へと変わっていくでしょう。
※この記事はリバイバル記事です。