住宅業界はクレームが多いってほんと?クレーム産業と言われる3つの理由

住宅業界はクレームが多いってほんと?クレーム産業と言われる3つの理由

 住宅業界を未経験の方はこれから転職する際にクレームにあったらどうしよう、自分がミスしなければいいのではないの?という不安などがあると思います。お客様仕事をしていた方でも、クレームというものをそこまで経験していない方も多いです。実際、住宅業界、建設業界はクレーム産業と言われるほどクレームが多い業界と言われています。なぜそれほどクレームが多く、長年そう言われ続けている理由は何なのでしょうか。この記事では、実際のクレーム例から、なぜそのようなことが起こってしまうのかを考えてみたいと思います。


1.現場で複数の会社が現物を作るため

 住宅は現場でいくつもの下請会社が介在し、完成に向けて工事をしていきます。このようなものはあまり他にないのではないでしょうか。例えば、車であれば、細かい部品からエンジンまで様々な企業が介在していることは同じです。しかし、車は製造工程において工場で作られます。そしてその工程ひとつひとつで不具合のある製品が混入していた場合、その場で作り直しが行われます。しかし、住宅の場合は以下のような会社が現場で作業を完成させます。
・基礎屋(基礎など)
・大工(木工事)
・型枠大工(基礎・土台など)
・屋根屋
・防水屋(ベランダなど)
・サッシ屋
・電気屋
・水道屋
・設備屋(給湯・排水・キッチンなど)
・内装屋(クロスなど)
・外構屋(土間など)
・足場屋
*現場作業はしませんが以下のような材料屋なども関わってきます。
・生コン屋
・外装、屋根材、内装材卸問屋
・各設備、サッシなどの卸問屋

 現場作業をする会社が上に挙げただけでも12個の会社が関与することになります(複数を請け負っている会社があれば減りますが、さらに下請企業に委託する場合も多いです)。これだけの会社が現場で一つのものを仕上げていくため、何か問題があっても、工事を進めなければいけなかったり、指摘することも面倒であったり、そもそも自分の仕事分しかする必要がないため問題に気づくこともありません。元請の管理者がどれだけ有能であっても、ミスなどが起こる確率は他の業界に比べて多いことが想像できると思います。またこのように下請け企業が多くぶら下がっているため値引きが過剰になり手抜き工事をしてしまう企業があることもあります。

2.購入前の正確な商品イメージがない

 かなり今では改善されてきてはいますが、住宅の細かい商品イメージは実はありません。例えば、モデルルームや設計図はありますが、モデルルームは実際の商品とは違いますし、設計図から出来上がる商品の細かい部分をイメージすることはプロでも難しいです。建売の場合は実物を見ることができますが、内部構造に異常があったときには気づくことができません。
 またリフォーム業界でもこれは問題で、頼んだ仕上がりと違うというクレームが多いです。契約の際に言った言わないのトラブルにあったことのない業者はいないでしょう。
 注文住宅でもリフォームでも、実際に出来上がった状態を完璧に再現してから実際に工事するということはほとんどありません。簡単な外装内装、間取りはモデルで再現できますが、コンセントの位置、各設備の高さや幅など、実寸大でないとわからないものもあります。技術が進歩してコストも安くなってきたため、再現モデルをある程度シミュレーションできるようになってきていますが、それでもイメージと違った、言われていたことと違うといったことが起こります。

3.簡単に交換ができない(費用面・生活面)

 住宅は不良品であっても簡単に交換ができません。高額なものである上に、交換するためにはその期間に生活環境を丸ごとどこかに移動させなければなりません。入居者の負担や費用を工面することは、大きな赤字となってしまいます。1軒赤字になれば、経営が立ち行かなくなる場合もあります。単純な物品であれば、交換することにより、その原価代が利益を圧迫するだけです。しかし、住宅業界の場合、不良品であった商品の原価代プラス工事費が利益を圧迫します。工事費は人件費であり売り上げよりも経費がかかってしまう状態になります。つまり費用面において、住宅関係の工事のやり直しは非常にコスト面で不利になりやすいものになります。そのため、業者はクレームに対し安易に対処してしまうと経営できなくなります。これがクレームを沈静化させることが難しく、クレームが大きくなりクレーム産業と言われる大きな理由の一つでもあります。

まとめ

 住宅がクレーム産業と言われるのは、1.現場で複数の業者が現物を作る 2.購入前の正確な商品イメージがない 3.簡単に交換ができない でした。もちろんクレームはどの会社でもありますが、住宅業界では特に多いと言われる理由がイメージできたかと思います。ただ、故意のものでなければ、裁判になったりすることはほとんどありません。クレームには誠意に対応することが沈静化させ解決する一番の方法になります。変にクレームを恐れるのではなく、クレームに対処する能力をつけていくことも重要なスキルになります。






※この記事はリバイバル記事です。

関連するキーワード


住宅 クレーム

関連する投稿


【空き家問題】リスクと活用方法とは?

【空き家問題】リスクと活用方法とは?

現在、住宅業界の課題となっていることのひとつに「空き家問題」があります。 「空き家問題」は、少子高齢化による人口減少の影響から今後もさらに深刻化することが予想されています。 また、空き家を放置することは、周辺環境の悪化などさまざまなリスクがあるため、なんらかの対策が必要です。 このような背景から空き家対策として法的な整備も進んでおり、場合によっては所有者に処分や罰則が科されるケースがあることは注意が必要となります。 しかし、空き家の所有者は、放置することのリスクに対し、どのような対応をすればよいでのしょうか? そこで本記事では、空き家を放置するリスクとおもな活用方法について解説したいと思います。


住宅ローンの定番「フラット35」とは?特徴や銀行ローンとの違い

住宅ローンの定番「フラット35」とは?特徴や銀行ローンとの違い

住宅を購入する際、多くの人が利用する住宅ローンですが、なかでも定番といえるのは「フラット35」になるでしょう。 「フラット35」の最大の特徴は「固定金利型」であることです。 「固定金利型」であることで、借り入れの時点で返済金額がわかり、また計画も立てやすくなります。 また、この他にも民間銀行が取り扱う住宅ローンとは異なる特徴があるため、知識として理解しておくとよいでしょう。 そこで本記事では、「フラット35」の特徴や銀行ローンとの違いについて徹底解説したいと思います。


【住宅建築の基礎知識】セメント、モルタル、コンクリートの違いとは?

【住宅建築の基礎知識】セメント、モルタル、コンクリートの違いとは?

住宅建築においては、非常に多くの建材が使われています。 なかでも「セメント」「モルタル」「コンクリート」については、必ず使用されるポピュラーな建材となります。 しかし、これらがどのような建材なのか、またそれぞれの違いがよくわからないという人もいるのではないでしょうか? そこで本記事では、「セメント」「モルタル」「コンクリート」について、それぞれの特徴の違いなどを徹底解説したいと思います。


プレハブ住宅とはどんな住宅?種類や特徴を解説

プレハブ住宅とはどんな住宅?種類や特徴を解説

戸建て住宅はいくつかの種類に分けられますが、建築するときの工法によっても分類することが可能です。 代表的な工法といえば「木造軸組工法」や「木造枠組壁式(ツーバイフォー)工法」、「プレハブ工法」などが挙げられます。 そして、この「プレハブ工法」で建てられた住宅が「プレハブ住宅」です。 また「プレハブ住宅」は、さらにいくつかの種類に分かれており、それぞれ特徴が異なります。 そこで本記事では、「プレハブ住宅」とは具体的にどのような住宅のことをいうのか、そしてどのような種類や特徴があるのかなど、徹底解説したいと思います。


住宅業界で働く人のリフレッシュ方法まとめ

住宅業界で働く人のリフレッシュ方法まとめ

住宅営業や、現場監督など非常に忙しく接客業でもあるためクレームやトラブルも多くストレスを溜めがちです。そこで、休日はどのようにリフレッシュしているのでしょうか?ストレスをうまく発散できない方も、他の方のリフレッシュ方法を真似してみましょう!1人で休日を過ごす方も、友達と遊ぶというものまで、それぞれご紹介いたします。


最新の投稿


【空き家問題】リスクと活用方法とは?

【空き家問題】リスクと活用方法とは?

現在、住宅業界の課題となっていることのひとつに「空き家問題」があります。 「空き家問題」は、少子高齢化による人口減少の影響から今後もさらに深刻化することが予想されています。 また、空き家を放置することは、周辺環境の悪化などさまざまなリスクがあるため、なんらかの対策が必要です。 このような背景から空き家対策として法的な整備も進んでおり、場合によっては所有者に処分や罰則が科されるケースがあることは注意が必要となります。 しかし、空き家の所有者は、放置することのリスクに対し、どのような対応をすればよいでのしょうか? そこで本記事では、空き家を放置するリスクとおもな活用方法について解説したいと思います。


【現場監督がよく使う建設用語】斫り(はつり)とはなに?

【現場監督がよく使う建設用語】斫り(はつり)とはなに?

住宅の新築工事において実際に施工を行うのは専門業者です。 しかし、場合によっては現場監督が行うケースもあり、例えば、きわめて小規模な「斫り(はつり)作業」もそのひとつとなります。 「斫り」は、工事現場でよく使用されるワードですが、いったいどのような作業のことをいうのでしょうか? そこで本記事では、現場監督がよく使う建設用語「斫り」について、具体的にどのような作業なのか解説したいと思います。


住宅現場で4Sを実践しよう!整理・整頓・清掃・清潔

住宅現場で4Sを実践しよう!整理・整頓・清掃・清潔

4Sという言葉を聞いたことがありますか?住宅の工事現場だけなどではなく、他業界でも多く用いられている言葉です。職場環境を改善するための活動で、整理、整頓、清掃、清潔、(しつけ)のことを4Sもしくは5Sと言います。この記事では、住宅現場において、4Sを行うことでどのようなメリットがあるのかについて、そもそも4Sとはどのようなことをすれば良いかからご紹介いたします。


住宅設計士必見!設計を体感できる日本住宅3選と現代住宅

住宅設計士必見!設計を体感できる日本住宅3選と現代住宅

良い住宅を建てるために多くの住宅設計事例を知ることが大切であることは言うまでもないかと思います。しかし、いくら写真や設計図などを見ていても、実際に体感するに越したことはありません。この記事では設計そのものを体感できる住宅についてご紹介いたします。


【暑中コンクリート】施工管理が注意するべき夏のコンクリート打設

【暑中コンクリート】施工管理が注意するべき夏のコンクリート打設

住宅建築において、基礎のコンクリート打設は非常に重要な工事のひとつになります。 施工管理としても、建物の強さを左右するコンクリート打設は適切な施工が行われることをしっかりとチェックしなくてはなりません。 しかし、夏のコンクリート打設は通常とは異なる難しさがあります。 この気温の高い時期に施工するコンクリートを「暑中コンクリート」と呼び、施工管理者は施工に向けて対策を講じる必要があるなど、とくに注意が必要です。 そこで本記事では、施工管理者が注意するべき「暑中コンクリート」について、リスクと対策をご紹介したいと思います。


最近話題のキーワード

ハウジングインダストリーで話題のキーワード


新築工事 現場監督 施工管理 住宅 利益 営業 職人 資格 現場監理 働き方改革 知識