1.現場で複数の会社が現物を作るため
住宅は現場でいくつもの下請会社が介在し、完成に向けて工事をしていきます。このようなものはあまり他にないのではないでしょうか。例えば、車であれば、細かい部品からエンジンまで様々な企業が介在していることは同じです。しかし、車は製造工程において工場で作られます。そしてその工程ひとつひとつで不具合のある製品が混入していた場合、その場で作り直しが行われます。しかし、住宅の場合は以下のような会社が現場で作業を完成させます。
・基礎屋(基礎など)
・大工(木工事)
・型枠大工(基礎・土台など)
・屋根屋
・防水屋(ベランダなど)
・サッシ屋
・電気屋
・水道屋
・設備屋(給湯・排水・キッチンなど)
・内装屋(クロスなど)
・外構屋(土間など)
・足場屋
*現場作業はしませんが以下のような材料屋なども関わってきます。
・生コン屋
・外装、屋根材、内装材卸問屋
・各設備、サッシなどの卸問屋
現場作業をする会社が上に挙げただけでも12個の会社が関与することになります(複数を請け負っている会社があれば減りますが、さらに下請企業に委託する場合も多いです)。これだけの会社が現場で一つのものを仕上げていくため、何か問題があっても、工事を進めなければいけなかったり、指摘することも面倒であったり、そもそも自分の仕事分しかする必要がないため問題に気づくこともありません。元請の管理者がどれだけ有能であっても、ミスなどが起こる確率は他の業界に比べて多いことが想像できると思います。またこのように下請け企業が多くぶら下がっているため値引きが過剰になり手抜き工事をしてしまう企業があることもあります。
2.購入前の正確な商品イメージがない
かなり今では改善されてきてはいますが、住宅の細かい商品イメージは実はありません。例えば、モデルルームや設計図はありますが、モデルルームは実際の商品とは違いますし、設計図から出来上がる商品の細かい部分をイメージすることはプロでも難しいです。建売の場合は実物を見ることができますが、内部構造に異常があったときには気づくことができません。
またリフォーム業界でもこれは問題で、頼んだ仕上がりと違うというクレームが多いです。契約の際に言った言わないのトラブルにあったことのない業者はいないでしょう。
注文住宅でもリフォームでも、実際に出来上がった状態を完璧に再現してから実際に工事するということはほとんどありません。簡単な外装内装、間取りはモデルで再現できますが、コンセントの位置、各設備の高さや幅など、実寸大でないとわからないものもあります。技術が進歩してコストも安くなってきたため、再現モデルをある程度シミュレーションできるようになってきていますが、それでもイメージと違った、言われていたことと違うといったことが起こります。
3.簡単に交換ができない(費用面・生活面)
住宅は不良品であっても簡単に交換ができません。高額なものである上に、交換するためにはその期間に生活環境を丸ごとどこかに移動させなければなりません。入居者の負担や費用を工面することは、大きな赤字となってしまいます。1軒赤字になれば、経営が立ち行かなくなる場合もあります。単純な物品であれば、交換することにより、その原価代が利益を圧迫するだけです。しかし、住宅業界の場合、不良品であった商品の原価代プラス工事費が利益を圧迫します。工事費は人件費であり売り上げよりも経費がかかってしまう状態になります。つまり費用面において、住宅関係の工事のやり直しは非常にコスト面で不利になりやすいものになります。そのため、業者はクレームに対し安易に対処してしまうと経営できなくなります。これがクレームを沈静化させることが難しく、クレームが大きくなりクレーム産業と言われる大きな理由の一つでもあります。
まとめ
住宅がクレーム産業と言われるのは、1.現場で複数の業者が現物を作る 2.購入前の正確な商品イメージがない 3.簡単に交換ができない でした。もちろんクレームはどの会社でもありますが、住宅業界では特に多いと言われる理由がイメージできたかと思います。ただ、故意のものでなければ、裁判になったりすることはほとんどありません。クレームには誠意に対応することが沈静化させ解決する一番の方法になります。変にクレームを恐れるのではなく、クレームに対処する能力をつけていくことも重要なスキルになります。