設計者はゼネコンと設計事務所どちらで働くとキャリアが築きやすい?

設計者はゼネコンと設計事務所どちらで働くとキャリアが築きやすい?

建築設計は、ゼネコン設計と設計事務所で大きく働き方が異なります。転職を考えている方にとって、どちらで働くかは仕事内容や取り組み方が大きく変わるため悩んでいる方も多いのではないでしょうか。どちらももちろん設計を行う職種ですが、全体の仕事の関わり方が違うため、その後のキャリア計画なども異なってきます。それぞれの特徴についてご紹介いたします。


ゼネコン設計部と設計事務所の違い

ゼネコン設計部と設計事務所は、その会社の目的が異なっているため、仕事の取り方や業務の目標に違いがあります。
・仕事の取り方
・業務の目標
これらについて大きく違いをご説明いたします。

仕事の取り方が違う

そもそも設計という仕事の取ってくる方法が異なっています。ゼネコンの場合には、建築物を建てるために設計を行うので、建築物の受注を行うところから始まります。そして建築物を引き渡して初めて売り上げが立ちます。
そのため、ゼネコンの設計部は設計する上で、施工をより意識し、工期短縮やコスト減などをこらした設計を行うことになります。

設計事務所の場合には、設計そのものが商品であり、設計アイデアやオリジナリティで勝負します。発注者の理想を叶える斬新な意匠設計などが求められることもあり、設計単体で満足してもらうことが目的です。設計業務を獲得するために、コンペなどの営業を行う必要もあります。
一つの設計実績が今後の仕事の評判にもなるため、設計には実績としてプラスになるように意識します。

つまり、施工を意識したゼネコン設計部、設計単体で発注者のニーズを満たすという違いがあります。業務に欠けるコストも、ゼネコンの場合には施工で利益を上げれば良いのに対し、設計事務所では設計業務のみで利益を上げる必要があります。

業務の目標が違う

ゼネコン設計部は、発注者のニーズを満たしながらも自社の技術で施工を行い最終的にどの程度利益が出るのかまでを考慮して設計を行います。

設計事務所は、発注者のニーズを満たしながらも期待以上のものを設計し、施工を意識するのではなく、一般的な技術力を持つ施工店で工事可能なものを作ります。

発注者との関わり方も異なり、ゼネコン設計部はほとんど発注者とは関わらないということもあります。意匠設計の場合には多少関わるようになってきます。設計事務所の場合には、発注者と密に関わり業務を進めていきます。

キャリアを築くポイント

ゼネコン設計部と設計事務所では、キャリアにどのような違いが出るでしょうか。この違いも、これからどちらで働くかを考える上で非常に重要です。

ゼネコン設計部は他部署での潰しが効く

ゼネコン設計部は、ゼネコンという大企業での一部のため他部署に異動することが比較的容易です。特に現場に出る職種に異動する場合には、人材として重宝されます。構造設計などを知っている方が現場にはあまりいないため施工もスムーズになり非常に心強いです。
ゼネコン内での昇進だけでなく、中小の建設会社での管理ポジションに転職することなども可能です。

建築設計から施工まで広く知識と経験を蓄えることができるキャリアを築きたい方にとっては、ゼネコン設計部がお勧めです。

設計事務所は設計だけで独立などを考えることが可能

設計事務所では、設計をメインで生計を立てていくことができるようなキャリアを築くことができます。設計事務所で働くことで、設計の仕事をどのように取って来れば良いのかを肌で身につけることができます。ゼネコンなどの大企業の場合には、知らずに仕事が舞い込んできており、それらをひたすら処理していくという働き方になるため、営業についてはあまり知らないといったことも多いです。

設計事務所の場合には、営業についても知ることができるため、設計事務所として独立を考えている方などにとっては良いキャリアを築くことができます。
発注者とも比較的近いため、受注から契約、納品完了までの一連の作業を行います。契約してからのトラブルや、どのように打ち合わせを行えばニーズを満たして、問題なく納品、入金までを完了させることができるのかについて知ることができます。

給与面での待遇

給与面では、ゼネコン設計部の方が比較的安定しています。給与水準が一般的に高いだけでなく、福利厚生といった待遇も手厚いです。

設計事務所は、企業の規模などにもよりますが、ゼネコンに比べると一般的に給与水準は低い傾向にあります。福利厚生などもゼネコンよりは劣ります。

設計事務所の場合には、チャレンジ精神やより自由に設計を行いたい人、将来は独立を考えているといった方が向いていると言えます。

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