住宅建築における断熱性能は、暮らす人の快適性のほか、光熱費などにも大きな影響を与える要素となります。
住宅の断熱性能を高めるうえでポイントとなるのは、どの断熱材を選ぶのかということですが、最も使われているものは「グラスウール」です。
では、「グラスウール」とは具体的にどのような材料なのでしょうか?
そこで本記事では、住宅の断熱材で最も使われる「グラスウール」のおもな特徴について解説したいと思います。
グラスウールとは
グラスウールとは、原料であるリサイクルガラスを繊維状に加工した断熱材です。
繊維が複雑に絡み合うと、内部には無数の動かない空気室がつくられますが、この構造により優れた断熱性能が確保されます。
もともと空気は断熱性能が高く、静止した状態では熱移動を効果的に抑えられます。
ただし、動く空気は熱を素早く遠くまで運んでしまうため、断熱効果はまったく期待できません。
グラスウールの性能について
グラスウールは、断熱性能はもちろんのこと、その他にもさまざまな性能を有しています。
グラスウールが持ついくつかの性能について、簡単に解説いたします。
■断熱性能
グラスウールの最大の特徴といえば断熱性能です。
ガラス繊維が絡み合ってできる無数の動かない空気室により、熱移動が抑えられ断熱性能を発揮します。
また、グラスウールの断熱性能は、「密度」や「繊維の太さ」によって大きく変わります。
「密度」が高くなるほど、そして「繊維の太さ」が細くなるほど、内部の空気室はより細かく、数も増えるため、断熱性能も高まるという仕組みです。
一般的に「高性能グラスウール」と呼ばれるものは、「繊維の太さ」が通常よりも細い製品のことをいいます。
■吸音性能
グラスウールは、吸音性能に優れる材料でもあります。
音は、物体が振動することにより発生し、気体や液体、固体などが媒介して人の耳へと伝わります。
しかし、グラスウールには無数の空気室があるため、内部に音が入り込んだとき、摩擦や抵抗が生じることで減衰するわけです。
そのため、住宅の防音対策として使われることも多く、住宅以外でも音楽室や機械室などの音漏れ防止として活用されています。
■不燃性能
グラスウールは、ガラスが主原料となっていることから、不燃性能に優れる材料となります。
そのため、天井や壁に配置しておくと、万が一の火事があった場合でも、住居人が避難する時間が確保できることや、隣家への延焼を防ぐことが可能となります。
また、グラスウールは、石油系の断熱材と違い、燃焼時に有毒ガスを発生させることがありません。
グラスウールの注意点
グラスウールは、住宅で使用する断熱材として非常に優れているといえます。
しかし、本来の性能を十分に発揮するためには、注意しなくてはならないことがあります。
そのグラスウールの注意点とは、以下の通りです。
- 気密性を高めること
- 水の影響を受けないようにすること
■気密性能を高めること
グラスウールの断熱性能を発揮するには、同時に気密性能も高めなければなりません。
住宅の断熱性能は、連続した断熱層で覆うよう施工することが重要であり、欠損が多くなるほど熱損失が増えて断熱効果にも影響を与えてしまいます。
つまり、隙間をできるだけ少なくする必要があるということです。
気密性能は「C値」と呼ばれる「相当隙間面積」によって判断できます。
「C値」とは、延べ床面積に対し家全体にある隙間の割合を示す指標のことで、数値が小さいほど気密性が高いということになります。
「C値」を高めるには、グラスウールの施工時に、隙間が生じないようサイズを合わせること、気密テープなどで隙間を埋めることなどの対策が必要です。
■水の影響を受けないようにすること
グラスウールは、水に濡れると断熱性能が低下するため、影響を受けないようにしなくてはなりません。
なぜなら、グラスウールが水分を含むと、内部の空気室が塞がってしまい、熱移動の抑制効果は著しく損なわれてしまうためです。
また、自重によりズレ落ちてしまうこともあり、そうなると断熱欠損が生じてしまいます。
よって、壁内に水分を供給する最大の原因である「結露」が起こらないよう施工することが重要になります。
壁内結露を防ぐには、湿気を含んだ空気が壁内へ入り込まないよう、グラスウールと内装仕上げ材の間に隙間のない連続した防湿層を設ける方法が有効です。
まとめ
グラスウールは、非常に優れた性能を有しているうえ、比較的コストが安いため、住宅の断熱材として最も使われています。
しかし、施工精度がともなわなければ十分な性能は発揮できません。
よって、グラスウールの施工時には、責任者によるチェックが行われることがポイントとなるでしょう。