長期優良住宅は70~100年以上住み続けることを想定
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成21年6月4日に施行されました。従来の日本の家屋の寿命は平均30年程度と言われており、つくって壊して新しい住宅を建てるというスタイルでした。こういったスクラップ&ビルド型の社会から、いいものを長く使うというストック型の社会の転換を目的とされています。これにより税制優遇措置もなされ、住宅ローン減税、不動産取得税、登録免許税、固定資産税など様々な優遇が受けられるようになっています。
長期優良住宅を手に入れる際、そのときの家族構成に応じた間取りを考慮します。しかし70~100年間その住宅を使用し続ける場合、家族構成が変わるだけでなく、世代交代も想定されます。その際に間取りや生活スタイルに合わせたリノベーションができなければ、とても不便になることが予想されます。100年間もの間、生活スタイルが変わらず、設備間取りを変更しないでも快適ということはほとんどないでしょう。
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間取りを自由に変えられない従来の建築構法
従来の建築工法で、間取りを自由に変えられない理由は、柱の位置、壁の位置、配管の位置などを変更できないためです。建造物というのは、柱、土台、梁、壁などで構造を支えています。つまり簡単に説明すると、間取り変更する際に、柱や壁を動かすと、建物が崩れてしまうということです。例えば、構造を支えている壁を耐力壁と言いますが、リビングと寝室の間の壁が耐力壁であった場合、この壁は取り除くことができないです。ここの間取りは変更できないということになります。また、配管の位置は基礎などにも影響されるため、浴室やキッチンの位置を変更することは費用が多くかかり不可能と言っても良いでしょう。
スケルトン・インフィル(SI)住宅はリフォームで間取りを自由にできる
スケルトン・インフィル(Skeleton-Infill, 略してSI)住宅は、間取りを自由に変えることのできる構想で建てられた住宅という意味です。スケルトンとは構造躯体(柱など)を指し、インフィルとは設備や内装のことを指します。
これは建築技術が進歩したことにより実現できる住宅になります。間取りを自由に変えることのできない要因であった柱・耐力壁などが少ない構造であるということです。つまり建造物の枠だけで構造を維持できるようになったものです。簡単なイメージとしては、家の中の柱が無くても外壁沿いにある柱だけで耐震性が確保できているということです。
また、床も2重構造にすることで、配管類も自由に変更することができるようになります。これによりトイレやキッチン、浴室などの水回りの間取りも変更できるようになります。50年後に、4LDKから3LDKにしたい、寝室を2Fから1Fにしたい、キッチンを1Fから2Fにしたいなど様々な変更が可能になります。長期優良住宅にとって、SI住宅は最適と言えるでしょう。
スケルトン・インフィル(SI)住宅は鉄骨構造も、木造でも実現できる
SI住宅は鉄骨ラーメン構造などの構法で実現できるものでした。鉄骨ラーメン構造とは、マンションやビル、立体駐車場のように柱と梁を剛接合したもので、7~9mの間を柱なしで耐震性を確保できる構造になります。ジャングルジムのような構造で、この柱の間隔がとても広いため、壁などが必要ないということになります。
鉄骨でなければいけない訳ではなく、木造でもSI住宅は可能です。SE(Engineering for Safety)構造といって「工学的で安全な構造」という意味になります。このSE構造は木造でありながら、緻密な構造計算と、柱と梁を強靭に接合しラーメン構造を採用したものになります。
スケルトン・インフィル(SI)住宅は長期優良住宅に最適
SI住宅は、世帯や間取りを変更する必要が70~100年間の間に生じる可能性のある長期優良住宅にとって最適な構想で建てられた住宅でしょう。何千万円もかけて建てた住宅を30年程度で建て替えてしまっては、費用や資材の面でももったいないです。従来の構法では、柱や壁の位置を変更できないため、長期優良住宅を建てても、大幅に間取り設計を変えたい場合には建て替えしか方法がありませんでした。しかしこのSI住宅であれば、大幅に間取り変更ができるため、長期優良住宅にとって最適な選択肢ではないでしょうか。
※この記事はリバイバル記事です。