建設業界の人手不足は慢性的に。20代以下の就業者は約10%程度
国土交通省のデータによると、建設業界の20代以下の就業者は全体の約10%程度です。全産業の平均が約16%のため、かなり低い数値であることがわかります。また、求人などを見ると建設業での営業や施工管理、技術職人はよく求人サイトに載っています。このことからも人手不足であることがわかります。なぜここまで需要がありながらも不人気な職種となってしまっているのでしょうか。一つ一つの職種ごとで例をご紹介します。
■営業の人手不足の理由
建設業界の営業は離職率が高いです。大手ハウスメーカーでも新卒の3年間の離職率は50%程度のようです。その理由は、単発仕事の営業だからです。例えば、毎月売上500万円の契約を取るために、携帯電話であれば100人程度契約を取れば、毎月その売上が会社としては作れます。一方で建設業の場合、500万円の契約を取っても、またその次の月には500万円をとって来なければいけません。このように建設業は単発契約となることがほとんどのため、ノルマに追われ、売れない月もあり、ストレスと体力の限界を迎えるのです。もちろん成功している営業マンは問題ないですが、そのような方は営業マン全体の10%程度といってもよいでしょう。
■職人の人手不足の理由
職人はどの業界でも不足していますが、建設業では若手が就職せず人手不足が特に慢性化しています。職人の仕事は非常に体力的にキツいのと、年収もそこまで高くなく、研修制度なども充実していないところが多いです。大手の会社なども職人を雇うことはしていないからです。使っている職人は全て下請け業者のことがほとんどです。その理由は2000万円の建物を建てるとき、ベテランの自社で研修を受けた20年の職人歴がある職人で立ててもらったら、その建物は2500万延になりますと言われたらどうでしょうか?要らないですよね。まず建造物の値段が決まっており、そこから職人の給与は支払われます。たとえどんなベテランになっても給与は増えないのが職人の不人気な理由の一つでもあります。
■施工管理の人手不足の理由
施工管理職は、資格制度などもあり、比較的資格を取ることで給与も上がっていきやすい職種です。しかし、施工管理職は休みの日にも現場でトラブルが起これば現場に駆けつけたり、毎日激務になってしまうほど業務が多く、それらがクチコミで広まることで不人気となっています。年収も実務経験を積むことで取得可能な資格があることからも、年収が上がるまでに数年かかる場合が多いです。そのため若手にとってはあまり魅力的な職種に見えないのでしょう。
儲かっている建設業とは?需要が多い業種4選
人手不足は需要が多いということです。儲かっていないわけではないのですが、儲かる建設業は元請けに近いところになります。また、会社は儲かっていても社員の年収が高いというわけではなく、あくまでも会社の利益が増えていくだけで職人の給与は他社と水準は変わらないといったところが多いようです。
1.足場屋
マンション、ビルなどの足場も請け負っている会社は売上が良いようです。足場は危険作業であることと、作業期間中に足場をレンタルしていることになるため、作業しない時間でも売上が入ってきます(その分が費用に含まれています)。そのため利益率が良いようです。また足場は安全である必要があるため、会社としての信用が重要です。信用が高い会社に依頼が集まるため、やはり儲かる会社はかなり利益を出しているようです。
2.塗装屋
塗装屋は元請けである会社は大きな利益をあげているところもあります。公共工事でも仕事を請け負うことができるため、下請けでしかできない職種より利益が出ます。また、公共工事をできる塗装屋も少ないということもあり、技術力などにも差が出てくるので、信頼と実績のある塗装屋は儲かっているようです。
3.防水屋
戸建てだけでなく、マンションやビルなど様々なところで防水工事は行われています。職人が少ないだけでなく、高い技術力が必要とされるため、需要に対して供給が間に合っていません。そのため単価も高くなり、職人の給与自体が高くなっているようです。
4.解体屋
解体業も儲かっているようです。元請けに近く、工事完了までに比較的日数もかからずに大きな金額が動くため、利益も出やすいようです。例えば住宅建設であれば、半年で500万円の利益が出るといったものでも、解体では1週間で100万円の利益が出るというような構図になるからです。
人手不足なのに年収が低くなる理由
人手不足で職人も足りないのに、なぜ年収が低く、若手からも不人気なのか。それは、建設業の下請け構造と、職人の1人工の値段が決まっているからです。まず、建設業のヒタ受け構造ですが、ハウスメーカーを例にしてみましょう。ハウスメーカーは5000万円の家を受注したとします。そのうち2000万円をハウスメーカーの利益とし、残り1000万円を材料費、残り2000万円が下請けに流れます。この時点で工事を主に行う下請けは10社あるとすると1社あたり200万円を受け取ります。この200万円のうち人件費を抜いた利益が100万円というようになってしまいます。つまり下請けの利益はほとんど残っていないのです。
また、職人の1人工ですが、ベテランでも先述したように1日あたりの給与は上限がほとんど決まっています(公共工事では1日2.5万円などと決められています)。そのためどれだけ腕が良くても年収は上がらないといったことが起きるのです。
※この記事はリバイバル記事です。