発注書と注文書は、ほぼ同じ書類
発注書と注文書は、ほぼ同じ書類です。企業や業界の慣例の呼び名で分けていると考えて良いです。同一企業内では、呼び方が統一されていることが多いです。一般的な呼び分けルールとして、「形あるもの」は注文書、「作業などの依頼」は発注書としているところもあります。
■発注書の役割
発注書は、相手業者に対して、何を発注したのかを明確に記録として残しておくものです。口頭での依頼だと、何を頼んだのかがお互いに不明確な部分があったりします。例えば、30分のの商談の中でも、「A工事はやめて、B工事にして、その際のa工事はそのままお願いします」という会話がよくます。口頭のみのやりとりだと、どこまでの工事なのかがお互いにわからなくなることもあるため、発注書を使用した方が間違いがありません。
■発注書は、契約書とどう違う?
発注書は、契約書ではありません。契約書というものは、当事者双方が同意した契約を証明する書類です。契約は、口頭でもお互いの同意があれば成立しますが、発注書は、一方的に依頼した書類であるので、契約書の代わりにはなりません。
しかし、発注書が契約書と同等に扱われる以下の場合もあります。
・見積書に対する発注書
見積書(受注側からの提案)に対して、発注書(発注側の申し込み)が発行されていれば、双方でその取引に合意があったとみなされるため、契約書と同等に扱われます。
・発注書と発注請書がある
発注請書とは、発注を承諾したことを意思表示する書類です。発注書だけでは、その承諾有無がわかりませんので、発注請書があることにより契約と同等に扱われます。
・発注書に双方の署名がある
発注書に双方の署名がある場合には、契約書とみなされます。書類の名称が違くても、双方が取引に合意したとみなせるものは、契約が成立したと考えられます。
■発注書の記載事項
・発注先業者名
・発注日
・施工現場名
・工事納期
・支払い期日
・支払い条件
・発注合計金額
・発注者名
・発注明細
・備考欄
発注書の記載は、発注明細を分かりやすくすることが望ましいです。工事は細かい作業が発生する場合があり、それらを発注書に記載することを怠ると、追加費用を請求されてしまいます。請負業者が困らないためにも、のちのトラブルを防ぐ書き方を意識しましょう。
発注書には発行義務がある(下請け法)
下請け法が適用される取引では、発注書などを発行することが義務付けられています。住宅会社など、発注側の企業は資本金なども大きい企業がほとんどです。一方で請負企業は、個人の親方であったり、中小企業であることが多いです。このような場合には下請け法が適用されます。
下請け法は、親事業者と下請け事業者の関係をできるだけ対等に保つ法律です。親事業者は、支払いを行う立場であるため、一般的に優越的立場にあります。下請け業者が不利益なことを強いられることを防ぐために、下請け法が適用されています。
■発注書の保管義務
発注書は、取引の証拠となる証憑書類にあたります。発行・受領した発注書のどちらも保管義務があります。原則として7年間の保管とされています。
保管方法ですが、紙での保管が従来は行われていましたが、電子データの保管がオススメです。業務効率化、コスト削減において、電子データの方が圧倒的に優位です。紙で発注書が送付された場合にも、電子データ化して一元管理することで業務が楽になります。
請求書は、受注側が支払いを請求する書類
請求書は、発注元に支払いを請求するために、受注側が発行するものです。取引を行なったことを証明したり、支払いのトラブルを防ぐための書類になります。
■請求書の書き方
請求書は、決まったフォーマットはありませんが、基本的な記載事項は発注書などと同じです。
・請求書発行者名
・請求先宛名
・取引日時
・取引内容
・請求金額
・支払い期日
下請け法が適用される場合、支払い期日は納品日から60日以内と決まっています。支払い期日を発注側の都合で、安易に伸ばさないように注意しましょう。
請求書は、基本的には発注書と全く同じ項目を記載した方が、トラブルも少ないです。書き方を変えてしまうと、どの内容に対して支払ったのか、お互いに相違が生じてしまうためです。
■請求書の送付方法
請求書は郵送・FAXされることが多かったですが、多くの企業でメール添付が行われています。費用もかからず早いため、メールでpdfデータとしてやりとりを行うのが望ましいです。建築業界ではいまだにFAXも使われていますが、保存方法は統一して行なった方が良いです。