【工事中の境界トラブル】注意することと対処法とは?

【工事中の境界トラブル】注意することと対処法とは?

住宅の新築工事では、トラブルが発生するケースもときにはありますが、なかでも「境界トラブル」は大きな問題になる可能性があるため注意が必要です。 土地の境界は、法律によりさまざまなルールが定められています。 それでも「境界トラブル」は起こることがあり、また場合によっては簡単に解決できないケースもあります。 そのため、境界に関することは、慎重に確認する必要があるのです。 そこで本記事では、住宅の新築工事における「境界トラブル」について、注意することと対処法を詳しく解説したいと思います。


住宅の新築工事では、トラブルが発生するケースもときにはありますが、なかでも「境界トラブル」は大きな問題になる可能性があるため注意が必要です。

土地の境界は、法律によりさまざまなルールが定められています。
それでも「境界トラブル」は起こることがあり、また場合によっては簡単に解決できないケースもあります。
そのため、境界に関することは、慎重に確認する必要があるのです。

そこで本記事では、住宅の新築工事における「境界トラブル」について、注意することと対処法を詳しく解説したいと思います。

そもそも境界とは?

そもそも境界とは、隣り合う土地の境を示す線のことで、隣の土地との境界線を「隣地境界線」、道路との境界線を「道路境界線」といいます。
また、境界線は、その土地の隅に位置する「境界点」を結ぶことで明らかになります。

「境界点」には、金属プレートやコンクリート杭などを用いた「境界標」が設置されていることが一般的です。
「境界標」が無い場合は、法務局で調べたり、土地家屋調査士など専門家に測量を依頼したりすることにより明確にする必要があります。

境界トラブルで注意すること

住宅の新築工事において、境界トラブルは起こることがあります。
どのようなトラブルが起こる可能性があるのか知っておくことで、注意を払い、また仮に起こった場合でも対応できるようになるでしょう。

そこで、住宅の新築工事に関連して起こる可能性のある境界トラブルについて、とくに注意しておきたいことを以下にご紹介いたします。

隣地へ立ち入らなくては工事ができないケース

工事中に、境界のブロック塀の設置や敷地が狭い場合など、隣地へ立ち入らなくては施工できないケースがあります。
この場合、無断で立ち入ることは許されませんが、必要な範囲で隣地の使用を求められることが法律により認められています。

つまり、隣地の所有者に承諾を得ることにより、工事に必要な範囲で敷地への立ち入りや足場の設置が認められるということです。
隣地所有者に承諾が得られない場合は、裁判所へ訴えて立ち入りを認めてもらうという方法もあります。

また、家屋内への立ち入りはいかなるケースでも認められていないことや、隣地の建物などへ損害を与えた場合は賠償しなくてはならないことなども注意しておきたい点です。

建物と境界の距離が短いケース

建物は、特別な慣習がある場合などを除き、境界から50cm以上離さなくてはならないことが法律により定められています。
これに違反して建築工事が行われている場合、隣地の所有者は、その建築を中止させたり、あるいは距離を変更させたりできる規定もあります。

ただし、着手から1年を経過、または建物が完成した後は、損害賠償を請求することしかできません。

工事前すでに越境が生じているケース

これから工事に入るというとき、すでに越境が生じているケースがあります。
例えば、隣地の所有するブロック塀などの構造物が境界を越えて入り込んでいるようなケースです。

この状態で放置すると、時効により、越境されている部分を相手側に取得される可能性があります。
そのため、越境の事実を明らかにし、同意のうえでつくり替えるなどの措置をとる必要があります。

なお、取得時効は、「所有の意思」をもって「平穏に公然」と一定期間占有することで成立しますが、その期間は以下の通りです。

  • 占有開始時点で善意かつ無過失(占有するものが自分の所有物であると信じ、そのことに過失がない)の場合は10
  • 上記以外は20

境界トラブルの対処法について

境界トラブルは、いったん起こってしまうと感情的になりやすく、工事進行にも大きな影響を及ぼす可能性のある問題です。
お互いの主張がぶつかり合うだけでは、関係はますます悪化してしまいます。

そのため、まずは根拠となる資料を用意するなど、境界を明確なものとして示す必要があります。
そのうえで、正確な境界をもとに工事を進めるべく協議を重ね、誠実に対応することが重要です。

また、その他にも、「境界問題相談センター」や「筆界特定制度」を利用するなど、第三者を間に入れて解決を図る方法もあります。
さらには、「境界確定訴訟」という裁判に訴える方法もありますが、この方法は時間やコストがかかるうえ、隣人関係に深刻な対立構造を生む恐れがある点では注意が必要です。

まとめ

工事中の境界トラブルは、完成後にも良好な隣人関係を構築するうえでも、丁寧に取り組むことが重要です。
トラブルがきっかけとなって関係が悪化すると、その後も遺恨が残る可能性があります。
よって、事実に基づき、お互いが納得できるよう誠実に対応することが重要になるでしょう。

関連するキーワード


新築工事 住宅 トラブル

関連する投稿


【空き家問題】リスクと活用方法とは?

【空き家問題】リスクと活用方法とは?

現在、住宅業界の課題となっていることのひとつに「空き家問題」があります。 「空き家問題」は、少子高齢化による人口減少の影響から今後もさらに深刻化することが予想されています。 また、空き家を放置することは、周辺環境の悪化などさまざまなリスクがあるため、なんらかの対策が必要です。 このような背景から空き家対策として法的な整備も進んでおり、場合によっては所有者に処分や罰則が科されるケースがあることは注意が必要となります。 しかし、空き家の所有者は、放置することのリスクに対し、どのような対応をすればよいでのしょうか? そこで本記事では、空き家を放置するリスクとおもな活用方法について解説したいと思います。


【現場監督がよく使う建設用語】斫り(はつり)とはなに?

【現場監督がよく使う建設用語】斫り(はつり)とはなに?

住宅の新築工事において実際に施工を行うのは専門業者です。 しかし、場合によっては現場監督が行うケースもあり、例えば、きわめて小規模な「斫り(はつり)作業」もそのひとつとなります。 「斫り」は、工事現場でよく使用されるワードですが、いったいどのような作業のことをいうのでしょうか? そこで本記事では、現場監督がよく使う建設用語「斫り」について、具体的にどのような作業なのか解説したいと思います。


【暑中コンクリート】施工管理が注意するべき夏のコンクリート打設

【暑中コンクリート】施工管理が注意するべき夏のコンクリート打設

住宅建築において、基礎のコンクリート打設は非常に重要な工事のひとつになります。 施工管理としても、建物の強さを左右するコンクリート打設は適切な施工が行われることをしっかりとチェックしなくてはなりません。 しかし、夏のコンクリート打設は通常とは異なる難しさがあります。 この気温の高い時期に施工するコンクリートを「暑中コンクリート」と呼び、施工管理者は施工に向けて対策を講じる必要があるなど、とくに注意が必要です。 そこで本記事では、施工管理者が注意するべき「暑中コンクリート」について、リスクと対策をご紹介したいと思います。


住宅ローンの定番「フラット35」とは?特徴や銀行ローンとの違い

住宅ローンの定番「フラット35」とは?特徴や銀行ローンとの違い

住宅を購入する際、多くの人が利用する住宅ローンですが、なかでも定番といえるのは「フラット35」になるでしょう。 「フラット35」の最大の特徴は「固定金利型」であることです。 「固定金利型」であることで、借り入れの時点で返済金額がわかり、また計画も立てやすくなります。 また、この他にも民間銀行が取り扱う住宅ローンとは異なる特徴があるため、知識として理解しておくとよいでしょう。 そこで本記事では、「フラット35」の特徴や銀行ローンとの違いについて徹底解説したいと思います。


【住宅建築の基礎知識】セメント、モルタル、コンクリートの違いとは?

【住宅建築の基礎知識】セメント、モルタル、コンクリートの違いとは?

住宅建築においては、非常に多くの建材が使われています。 なかでも「セメント」「モルタル」「コンクリート」については、必ず使用されるポピュラーな建材となります。 しかし、これらがどのような建材なのか、またそれぞれの違いがよくわからないという人もいるのではないでしょうか? そこで本記事では、「セメント」「モルタル」「コンクリート」について、それぞれの特徴の違いなどを徹底解説したいと思います。


最新の投稿


現場に労働基準監督署がやってきた!役割、現場監督の気持ち

現場に労働基準監督署がやってきた!役割、現場監督の気持ち

住宅業界だけでなく、建設業界では馴染みの深い(?)労働基準監督署についてご紹介いたします。労基(ろうき)と略して言われますが、今日は労基がくるぞ!などと会社としては身構える日になります。書類関係や現場をチェックされ、違反などがあれば是正勧告などの指導が入ります。違反が重大なもので、指導に従わない場合、行政処分もあります。現場監督は問題がないように書類関係の準備や現場を普段から安全管理等しっかりと行う必要があります。


【土地家屋調査士】仕事内容や資格試験などを解説

【土地家屋調査士】仕事内容や資格試験などを解説

住宅業界には、資格を有していないとできない仕事が多くあり、「土地家屋調査士」もそのひとつとなります。 また、住宅を新築するときには、土地を購入し、そこに建物を建てて登記が行われるという大きな流れとなりますが、この間にはいくつもの法的な手続きが必要となります。 しかし、これら手続きの多くは誰にでもできるわけではありません。 なかには有資格者である専門家が行わなければならないことが定められており、そして「土地家屋調査士」でなければできないことも含まれています。 そこで本記事では、「土地家屋調査士」のおもな仕事内容や、資格試験の概要などについて解説したいと思います。


【空き家問題】リスクと活用方法とは?

【空き家問題】リスクと活用方法とは?

現在、住宅業界の課題となっていることのひとつに「空き家問題」があります。 「空き家問題」は、少子高齢化による人口減少の影響から今後もさらに深刻化することが予想されています。 また、空き家を放置することは、周辺環境の悪化などさまざまなリスクがあるため、なんらかの対策が必要です。 このような背景から空き家対策として法的な整備も進んでおり、場合によっては所有者に処分や罰則が科されるケースがあることは注意が必要となります。 しかし、空き家の所有者は、放置することのリスクに対し、どのような対応をすればよいでのしょうか? そこで本記事では、空き家を放置するリスクとおもな活用方法について解説したいと思います。


【現場監督がよく使う建設用語】斫り(はつり)とはなに?

【現場監督がよく使う建設用語】斫り(はつり)とはなに?

住宅の新築工事において実際に施工を行うのは専門業者です。 しかし、場合によっては現場監督が行うケースもあり、例えば、きわめて小規模な「斫り(はつり)作業」もそのひとつとなります。 「斫り」は、工事現場でよく使用されるワードですが、いったいどのような作業のことをいうのでしょうか? そこで本記事では、現場監督がよく使う建設用語「斫り」について、具体的にどのような作業なのか解説したいと思います。


住宅現場で4Sを実践しよう!整理・整頓・清掃・清潔

住宅現場で4Sを実践しよう!整理・整頓・清掃・清潔

4Sという言葉を聞いたことがありますか?住宅の工事現場だけなどではなく、他業界でも多く用いられている言葉です。職場環境を改善するための活動で、整理、整頓、清掃、清潔、(しつけ)のことを4Sもしくは5Sと言います。この記事では、住宅現場において、4Sを行うことでどのようなメリットがあるのかについて、そもそも4Sとはどのようなことをすれば良いかからご紹介いたします。


最近話題のキーワード

ハウジングインダストリーで話題のキーワード


新築工事 現場監督 施工管理 住宅 利益 営業 職人 資格 現場監理 働き方改革 知識