新卒からIT業界で3年、住宅営業7年、メーカー2年、技術営業4年、独立
私は新卒からIT業界で3年働いていました。IT業界といっても、私自身はプログラミングなどができるわけではなく、クライアントから依頼を受けたものをプログラマーなどに投げて、それをディレクションし、マーケティングのようなことをやっていました。しかし、IT業界はお客様の顔が見えず、実際に自分たちが監督した成果物がどのように評価されているのかなどをあまり知ることができず、やりがいがないなと私は感じていました。そこで思い切って、営業をやってみたいと思うようになりました。営業の中でも、住宅営業はお客様と直接やりとりをして、自分の提案がお客様に気に入ってもらえて、すごく楽しい経験ができるのではないかと漠然と考えていました。大手のハウスメーカーとかではなく、地域の中堅ハウスメーカーといったところに転職できました。
住宅営業は7年勤務し、主任のような立場になり、部下を持ち年間12棟ほど売っていました。この時の経験についてお伝えできればと思います。その後、営業職を何社も転職を続けるという方もいたのですが、私はメーカーで2年本部仕事を行い、その後技術営業として4年働き、今は独立して小さな事業を行なっています。
住宅営業で得られたスキルは、洞察力、コミュニケーション能力
営業という仕事は、資格がありません。何年真面目に働いていても資格制度自体がないため、いわゆる手に職はない職業かもしれません。しかし、実は営業を何年も続けるということはある程度売れ続けているということであり、真面目に働いていれば、目に見えない(資格で表せられない)能力が身に付いていると思っています。
特に私が得られたスキル2点で、洞察力、コミュニケーション能力になります。
■洞察力では、購買意欲を掻き立てるものを見抜く
洞察力といってもさまざまありますが、営業に一番大事なのは、そのお客様が買いたいと思う「何か」を引き当てることです。会話の中でこの「何か」を見つけることが営業をやっていなければ見抜くことができなかったと思います。例えば、住宅営業であれば駅が近い物件をお探しのお客様にとって、駅徒歩1分で相場より安めの物件であれば、購買意欲を掻き立てます。しかし、これだけではまだ契約にはなりません。契約に至るまでには、住宅ローンの相談や、他物件との比較など、さまざまな検討をしながら、お客様がもう決めるしかないという状況になるよう導くことが必要です。言い方が悪いかもしれませんが、何千万もする買い物にはこれだけの後押しが必要になります。
実は、安いものを買うときにもこのような小さな後押しというものが必ず必要です。そのため、この購買意欲を掻き立てるものを見抜くスキルは、全ての業界の仕事に役立つと思っています。ネット通販で何かものを買う時も、クーポンであったり、特集ページがあったり、全てはどのようにして購買意欲を高め、購入するための小さな後押しをするかを考えて作られたものです。普段は買う側の立場でしたが、売る側の立場からの見方をできるようになったのは、営業をやっていたからになります。
■コミュニケーション能力は、相手を味方につけることができる
コミュニケーション能力といっても、ただ単に話が続くということではありません。住宅営業では、お客様から何千万という契約をいただくという大きな信頼を得られないといけません。嫌いな営業マンと住宅の契約はしませんよね?つまり、コミュニケーションを取ることで、お互いに信頼しあい、味方を作ることができるのです。世の中の仕事は全て人と人のつながりです。お金が関わっている以上、お金を使うのは人であり、人とつながっていない仕事はないと思います。そのため、どこの職場に行っても他人と信頼関係を結び、味方につけ、お互いに切磋琢磨しあえる環境を自ら作ることができるのです。このように考えたら、営業ほど素晴らしいスキルが身につく仕事は無いと思っています。
住宅営業での経験は、転職先で有利になる
真面目に住宅営業をしていれば、どの職種の転職先でもうまくやっていくことができます。どの職種でも、会社は利益を追求しているため、洞察力とコミュニケーション能力で、会社の考え方に沿った利益追求の働き方ができるようになります。
住宅営業からメーカーに転職した際、部品の製造マネジメントを行っていました。転職活動での面接で、マネジメント業務は、「相手の仕事のやる気を引き出す(洞察力を応用)ことができる、取引先とも円滑に話をつけることができる(コミュニケーション能力)」といったようなことをうまく言いました。
営業に就いたから一生営業から抜け出せないということはなく、営業をしてスキルが身につくからこそ、様々な職業で活躍することができると思っています。