現場監督が日常的によく使うワードに「クラック」があります。
「クラック」とは、建物やコンクリート構造物などに現れるひび割れのことをいいますが、さまざまな原因で生じます。
また、「クラック」には危険性の高いものとそうではないものがあり、とくに危険なものについては、適切な方法により補修することが重要です。
現場監督が「クラック」を発見した場合、補修を指示するだけでなく、症状が軽微であれば自ら補修するケースも珍しくありません。
そこで、本記事では、現場で発生する「クラック」について、その原因と補修方法についてご紹介いたします。
クラックが発生する原因とは
クラックは、外壁や基礎など、あらゆる部分に発生します。
これらが発生するのはさまざまな原因が考えられますが、代表的なものは以下の通りです。
- 乾燥収縮
- 施工不良
- 地震
- 経年劣化
■乾燥収縮
クラックは、乾燥収縮が原因で発生することがあります。
とくに、コンクリートやモルタルなど、湿式工法によるものは、施工後に含んでいる水分が時間をかけて蒸発し、体積を減らすことで発生します。
クラックが発生する最も多い原因は、この乾燥収縮によるものです。
■施工不良
クラックは、施工不良が原因で発生することがあります。
例えば、基礎のコンクリート打設時に、打ち重ね部分で所定の時間をオーバーして一体化できなかった場合、その部分にクラックが生じることがあります。
また、鉄筋のかぶり厚さ不足なども、クラックが生じる大きな原因のひとつです。
なお、鉄筋のかぶり厚さについては「【現場監督がよく使う建設用語】鉄筋の「かぶり」とはなに?」の記事を参考にしてください。
■地震
クラックは、地震が原因で発生することがあります。
例えば、外壁のサイディングは、地震の揺れにより、サッシや釘を打っている部分と衝突することでクラックが生じる場合があります。
内装の壁なども、地震が発生すると、揺れに耐えきれずクラックが生じてしまうことも珍しくありません。
また、不動沈下により、建物の荷重バランスが崩れると、基礎などにクラックが生じる場合があります。
■経年劣化
クラックは、経年劣化が原因で発生することがあります。
例えば、外壁のサイディングや目地のコーキングは、紫外線や汚れなどの影響によって劣化するとひび割れが生じます。
また、基礎において、中性化やアルカリシリカ反応のような劣化現象が起こることなども、クラックが発生する原因です。
クラックの補修方法
外壁や基礎にクラックが生じている場合、材料の交換か、あるいは適切に補修するなどの対処が必要となります。
クラックの代表的な補修方法は、以下の通りです。
- 被覆工法
- 注入工法
- 充填工法
■被覆工法
被覆工法とは、フィラーやポリマーセメントモルタルなど表面被覆材を用いて仕上げ面を被覆する工法です。
ヘアークラックと呼ばれる、おもに0.3mm未満のクラックに適した方法であり、きわめて軽微なものであれば、現場監督が行うケースもあります。
■注入工法
注入工法とは、専用の器具を用い、エポキシ樹脂などを奥深くまで注入して硬化させることで全体の一体化を図る工法です。
おもに0.3mm以上のクラックに適した方法であり、コンクリート構造物へのクラック補修として一般的に行われています。
■充填工法
充填工法とは、クラックに沿ってU字型にカットし、コーキングなどの補修材を充填する工法です。
おもに1.0mmを超えるような比較的規模の大きなクラックに適した方法であり、外壁のサイディングにもメンテナンス時の補修として行われることがあります。
まとめ
クラックとは、外壁や基礎などの表面に現れるひび割れのことをいい、比較的よく起こる現象のひとつです。
しっかりとメンテナンスを行えば、建物への影響を抑えられるため、状況に合わせて適切に補修していくことが重要になります。
なお、一般的に、0.3mm未満のヘアークラックは、危険性が低く、急いで補修する必要はないとされています。
一方、0.3mm以上のクラックは、危険性が高く、放置すると劣化を促進する可能性があるため、できるだけ早く補修を検討する必要があります。