住宅にとってリスクとなることのひとつに「結露」があります。
「結露」は、カビやダニなどが発生する原因となる他、重要な構造を傷めて建物寿命を縮めてしまう可能性もあるため、十分な注意が必要な現象です。
また「結露」対策として重要なことといえば、建物の断熱性能を高めることが挙げられます。
しかし断熱性能は、施工精度にも大きく影響を受けるため、施工管理は適切な施工が行われていることをチェックすることが重要です。
そこで、本記事では、住宅のリスクである「結露」の正体と、「結露」対策として施工管理が注意しておきたい施工ポイントについて解説したいと思います。
結露の正体について
結露は、私たちの生活のなかで比較的よく起こる現象のひとつです。
また結露は、住宅の性能や生活環境などが影響しますが、発生の原因となるのは大きく以下の2つが考えられます。
- 室内と外部の温度差が大きい
- 室内の湿度が高い
■室内と外部の温度差が大きい
空気は、一定量の水分を水蒸気として含むことが可能です。
この空気中に含むことができる限界の水蒸気量のことを「飽和水蒸気量」といい、またその量は温度によって変化することが特徴となります。
なお、「飽和水蒸気量」は温度が高いほど多く、低いほど少なくなります。
つまり、暖房して温度が高い部屋の空気は多くの水蒸気を含むことができる一方で、暖房していない温度の低い部屋の空気は含むことができる水蒸気の量は少なくなるということです。
例えば、暖められて「飽和水蒸気量」の限界まで水蒸気を含んだ空気は、急激に冷やされると簡単に「飽和水蒸気量」を超えてしまいます。
「飽和水蒸気量」を超過した水蒸気は、水滴となって表面化するようになります。
この水滴が表面化する現象が結露です。
窓周辺で結露が多いのは、この温度差が大きな原因となります。
室内を暖めて多くの水蒸気を含んだ空気が外部温度の影響を受けやすい窓付近へ移動すると、そこで「飽和水蒸気量」を超えて結露が起こるというメカニズムです。
■室内の湿度が高い
室内の湿度が高いと、空気中により多くの水蒸気を含むようになります。
水蒸気を含んだ空気が急激に冷やされると、「飽和水蒸気量」を超えて押し出されるように水滴となって表面化しますが、湿度が高いほどその量も多くなります。
2種類の結露
結露には、以下の通り大きく2つの種類があります。
- 表面結露
- 内部結露
■表面結露
窓や壁などの表面に発生する結露が表面結露です。
結露の水滴は視覚的に確認できるため、発生するとそのことが認識できます。
よって表面結露は、水滴を拭き取ることで、カビの発生などの被害はある程度抑えられます。
■内部結露
おもに壁の内側で発生する結露が内部結露です。
発生しても視覚的に確認できないため、気が付かないうちに症状が進行します。
内部結露が起こると、断熱材の性能低下や木材の腐朽など深刻な症状につながることがある非常にやっかいな現象です。
施工管理が注意しておきたい結露対策
住宅の結露対策として重要な要素となるのは、「断熱」「気密」「換気」が挙げられます。
断熱性能および気密性能を高めることにより建物内に温度差が生じないようにすること、そして計画的な換気により建物内の湿気を適切に排出することが重要です。
しかし、これらの性能は、住宅会社ごとに仕様が異なるため、バラつきが生じる部分でもあります。
■断熱と気密はセット
住宅の断熱性能は、断熱材の性能を高めればよいというわけではなく、必ず気密性能も同時に確保しないと大きな効果は期待できません。
住宅の気密性能とは、「建物の隙間をどれだけ減らせるか」ということです。
いくら断熱材の性能を高めても、隙間が多いと空気の流出入が活発化するため、どうしても外部温度の影響を受けてしまいます。
断熱性能は気密性能を併せて高めることで、十分な効果を発揮することが可能となります。
■気密性能は施工精度が重要
気密性能は、施工精度がきわめて重要になります。
気密性能を高めるには隙間をできるだけ少なくする必要がありますが、そのためには断熱工事で隙間のない連続した断熱層を確保しなくてはなりません。
施工管理は、断熱工事が完了するタイミングで検査を行い、隙間など断熱欠損が生じている部分はないか、しっかりと確認する必要があります。
そうすることで、期待できる性能を最大限発揮し、結露対策にも寄与するわけです。
まとめ
住宅の結露は、建物にとって深刻な問題です。
施工管理は、結露が起こらない家づくりができるよう、必要なチェックを確実に行うことが重要になります。
また、新築直後は、建物が工事中に使った水分を大量に含んでおり、結露を起こしやすい状態にあります。
建物に含んだ水分は、時間をかけて徐々に抜けていくため、初期段階は換気を徹底することもポイントです。