現場監督にコミュニケーションスキルは必要か
現場監督に、コミュニケーションスキルは必ずしも必要ではありません。コミュニケーションスキルと言っても、曖昧な表現であり、例えば「誰とでも仲良くなれる」「交渉が上手い」「無理でな要求も飲んでもらいやすい」といったものがあります。
しかし、これらのスキルは、現場監督にとっては二の次です。仕事ができる現場監督にとっては、これらのスキルはその人の個性にすぎません。必要なことは別にあります。
これから現場監督として、建築業界に挑戦しようとしている方や、営業職などから現場監督に転職しようと言う方も、コミュニケーションスキルに恐れる必要はありません。では、現場監督にとって一番重要なコミュニケーションのポイントは何でしょうか?
守るべきポイント「ハッキリと話し、仕事に前向き」
「ハッキリと話し、仕事に前向き」
これが、現場監督にとって必ず必要で、1番重要なポイントです。どの話し相手に対しても、内容をハッキリと伝え、わからない場合などは、「調べてきます」とハッキリ伝えます。そして、工事を問題なく進めるために動いていて、自分のためでも、会社のためといった偏ったものではなく、発注者・施工会社・職人の立場を考え、最善の方法をとっていると明確に伝えることが重要です。
このような伝え方をすれば、誰も文句を言えません。文句が来ても、それは単なる意見交換です。ケンカなどではなく、それが必要な理由を述べれば良いだけです。相手も現場監督を困らせるために、意見をしてきているわけではありません。自分たちだけが損をしないように、要求を述べているだけです。相手が損をしているわけではないことを伝える、もしくは非を謝罪して、現場監督からの要求を伝えます。これは、コミュニケーションスキルではなく、礼儀です。
また、以上のように、「ハッキリと話し、仕事に前向き」に話している人を、嫌ったり、仕事において悪いようにしてくる人は滅多にいないでしょう。現場監督において、非常に重要な姿勢です。
■失敗例①誰とでも仲良くなれる人
コミュニケーションスキルが高く、誰とでも仲良くなれる人の失敗例です。「ハッキリと話し、仕事に前向き」なポイントを守っていないと、失敗します。
自社内でも、取引先からも誰とでも仲良く話せる気さくな人という印象の現場監督です。職人とも初めて会った方でも気軽にコミュニケーションが取れます。ある工事現場で、職人から現場の不明点を聞かれた際に「職人の〇〇さんの言う通りが良いと思うので、とりあえずこれで進めてください!」と軽く返事をしました。
しかし、これが実は後の工事で納まりが上手くいかなくなることが判明してしまいます。現場監督は、そのときは軽く考えていて、職人とも仲良く話せていたと思っていました。一方、職人は激怒し、現場監督を責めます。このとき現場監督は「〇〇さんが、それが良いって言ったからですよ」と答えてしまいます。このせいで、現場が悪い雰囲気になり、工事が進まなくなってしまいました。
以上のような失敗は、現場監督が、コミュニケーション力に自信があり、仲良くなっているため、相手の判断ミスは、相手のせいと考えてしまっています。「仕事に前向き」というポイントを守らなかったためです。
■失敗例②交渉が上手い人
コミュニケーションにおいて、交渉が上手い人というのもいます。これも同じように、「ハッキリと話し、仕事に前向き」なポイントを守っていないと、失敗します。
交渉が上手い人は、相手と小さな取引条件などを提示し、うまく相手に要求を飲ませます。職人に対して、「今日は1時間早く上がっていいので、ここを早く終わらせてください」と伝えたとします。しかし、上がる予定の時刻になった際に、発注者が抜き打ちで見学に来ました。職人は帰るわけにいかなくなってしまい、不満が溜まっていきます。このようなことが積み重なり、職人の現場監督に対するイメージが悪くなります。一方、現場監督は、職人の不満が溜まっていることなど考えず、相変わらずコミュニケーションがうまくできていると勘違いしています。
以上のように、交渉が上手い人は、相手に不満が溜まっていることを気づかない傾向にあります。相手に真の目的を伝えずに誤魔化し、相手を言いなりにしようとしている節もあります。「ハッキリと話す」というポイントを守っていないためです。