BIMは「建物の情報モデル」
BIMは、Building Information Modelingの略称になります。直訳では「建物の情報モデル」といった意味になります。簡単に表すと、このBIMを見れば、建物のあらゆる情報が把握できるということです。
例えば、平面図からは、建物の外周、室内間取り、延べ床面積などの情報が得られます。しかし、他の部材の商品名やコストなどはわからない情報です。そこでBIMは、この平面図の情報はもちろん、立面図、土地情報、各部材の商品名・品番、建設コスト、メンテナンスコストまで全てを網羅した情報データ群というイメージになります。
■BIMによる3D建築模型からわかること
BIMは3DCADのように、3Dの建築模型を表すことができます。そしてこの3D模型の中に様々な情報が入っています。外観や寸法もそうですが、2次元の図面情報、各部材の必要量・コスト、施工日数、メンテナンス費用など、建築設計施工全体にかかること全ての情報を包括しています。
例えば、建築資材の鉄骨をA社のものからB社のものに変更することにした場合、コスト変更や、組み立ての際の微妙な隙間が発生するかなどを、BIM上で変更するだけで、全て出力することができます。
BIM導入の背景、普及率
BIMは情報のデータの集まりで、管理を一元化できることが利点です。スマホアプリで10個を使っていたが、1個で同じことができるといったイメージでしょうか。建築業界でこのBIMが導入されるようになった背景と普及率についてご紹介します。
■BIM導入により建築業界の煩雑さが解消される
建築業界は多くの業種が関わり、業務が非常に煩雑になっています。例えば、ビルの建設において、20社以上の企業が関わることもあります。不動産、建設業者、電気業者、通信業者、設備業者、エレベーターメーカーなどなど、各業業者の下請けも必ず存在し、取引業社も含めると膨大な関係業者がいるのがわかると思います。
つまり、ビル建設において各部材の商品名を確認しようとしたとき、多大な時間がかかります。また、一部変更をしようとすると、その各種連絡、コスト管理にも多くの業者が関わっているため、それだけで1時間以上はかかってしまいます。
BIMを用いることで、1つの変更に対し、あらゆる図面、コストを1回の入力で全て出力することができます。したがって、業務を効率化しながら、ミスも減らすことができるのです。
■BIMの普及率は約30%
BIM導入事業所は全体の30%程度のようです(2018年アンケート結果)。実際に活用している事業所はこのうち約17%で、うまく活用している企業はまだまだ少ないようです。
原因としては、大手企業でも導入した際に人材の研修コストや、時間がかかることがあります。また、下請け業者などにも活用方法を指導しなくてはいけないため、多大なコストと時間が同様にかかります。PCを扱えない業者などもいるため、建設業においてのIT化が遅れている状況で、BIMは高度な技術と捉えられているようです。
参照)一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会 https://www.njr.or.jp/list/01277.html
BIM導入によるメリット
BIMを導入することで、3Dシミュレーションをより正確に行うことができます。また、コスト管理や、施工主への提案が効率化されます。これらによりどのようなメリットがあるのかご紹介致します。
■高度な3Dシミュレーション
3Dシミュレーションといっても、ただ外観がわかるだけではなく、この3Dから2Dの図面情報を出力したり、1つの部材を変更したときに外観情報だけでなく2Dの図面情報まで一括して変更されます。従来は一つ一つのデータを変更しなければならなかったので、非常に効率的になります。
また、施工予定地の3Dシミュレーションを行い、周りの環境、風景を考慮して、外観の色や建造物そのものの形を変更するなどの検討を容易に行うことができます。
そして施工現場での不整合を防ぐほどのシミュレーション制度もあります。平面図だけでは、現場で納まりが悪いといった不整合が起きることがよくあります。しかしこの3Dシミュレーションはこういった室内の施工状況なども事前に把握することができます。つまりPC上で一度建設したものを確認しながら、現場で作業できるので、ミスを減らすことができます。
■コスト管理の精度が上がる
下請け業社が何社もあり、見積書が100枚もあった場合、誤差なく管理することは至難の業ではないでしょうか。BIMでは部材ごとに商品単価や施工単価なども情報を含みます。つまり、わざわざ見積もりを統括して集計するのではなく、BIMの情報から一括してコスト情報を出力することが可能です。アナログな作業では、見積もりで重複しているところなどを発見することは難しいですが、BIMであればすぐに判断可能です。
また、メンテナンスコストについてもBIMで算出することも可能です。従来の方法であれば、メンテナンスはメンテナンス事業者へ再度見積もりを取り、まだ決まっていない仕上がりの使用なども推測しながらの概算見積もりとなります。しかしBIMであれば、最終仕上がりに応じて上方修正されるので、正確なメンテナンスコストがわかります。
■施工主が直感的にわかる
正確な3Dシミュレーション、より精度の高いコストおよびメンテナンスコストの把握ができることで、外観だけでなく費用面も安心して取引することができるようになります。
打ち合わせで変更をした際に、1つの変更で1週間以上かかっていたものも、その場でおおよその概算から打ち合わせが可能になります。
まとめ
BIMは情報データ群というイメージなので、わかりにくい印象を受けますが、実はそこまで難しいものではありません。簡単に表すと、10個のアプリを1つにまとめたようなものです。これからBIMは建築業界で主流のモデルになっていくと予想されますので、大まかにどういったものなのかは知っておくようにしましょう。
※この記事はリバイバル記事です。