完全な男社会でセクハラやモラハラが心配
建築業界に女性進出の一番の障害になっているのが、この業界が男社会であることです。これは女性に限らず、実は男性にも障害となっており、業界全体が人手不足になった根本的な原因の一つなのです。
工事現場は危険が多く、非常に体力を必要とする仕事場です。その為、どうしても男性中心の社会が形成されており、陰湿で劣悪な環境ができてしまうことは言い訳ができない事実です。そのため、職場環境が時代のニーズや流れに合わない上に「3K(キツイ・危険・汚い)」の職場となり、男性にも嫌われてしまう業界になり下がっていきました。
当然そんな社会ではモラルも低く、上司をはじめとして末端の作業員までモラハラの職場環境です。そんな中に女性が入れば、セクハラやモラハラの対象にされるのは火を見るよりも明らかです。その為、これまで女性が建築業界で働くという事はほとんどなかったのです。
業務の拘束時間が長く、休みが少ないので子育てできない
建築業界では、基本的に土曜日祝日は仕事で休みは日曜日しかありません。朝も早朝から現場という事はざらにあり、工事が遅れていれば夜中まで残業ということが、これまでは当然の世界でした。しかし、過労死やブラック企業の問題が表面化されて、ここ10年ほどの間にノー残業デーや週休2日の取り組みが少しずつ増えてくるようになりました。
しかし、この取り組みは大きな会社や企業などが多く、まだまだ小さな企業や個人事業主では浸透が遅れています。それは工事には、その日にまで完了しなくてはいけない「工期」があるからです。工期に遅れるとそれだけ損失が増えて赤字になってしまいます。建築業界の休みが少ない理由の一つです。
女性が建築業界で仕事をするには、このような休日の取り方ではなかなか難しいといえるでしょう。結婚して家庭を持ち、子供を産み育てていくにはしっかりとした休日が必要です。このような休日の体制も、女性が建築業界に進出することの障害になっています。
女性なのにどうしてという周囲の偏見
施工管理の仕事は、工事現場が適切に動く様に監理や指揮を行う仕事です。また、作業員への教育や指導も行う立場なので、時には間違っていることに対して厳しく注意をしなくてはなりません。
そのような職に女性が就いていれば「女のくせに生意気だ」と思う人間は多くいるでしょう。前述にもありますが、建築業界は男社会でセクハラやモラハラの多い悪名高い業界です。 残念なことですが、こうした人が現場には多く存在します。
また、これは業界だけではなく一般的な問題として「女性が責任者だと不安になってしまう」といった世間的な認識も多いことも確かです。実際に施主の方が「現場監督が女性だと心配」といった意見があるのも事実です。
このような偏見が、建築業界そして社会にもあるので、施工管理の女性進出の妨げになっている残念な理由です。しかも、あまりマスコミなども取り上げないので、そんな事が本当にあるのかと疑う人も少なくはありません。
それでも多くの女性が進出している施工管理の世界
施工管理の仕事に男女の区別は全く関係ありません。むしろ、管理能力やリーダーシップはは男性より女性の方が優れているというデータも海外にはある程です。しかし、長年男性優位の社会だった日本では、女性でさえその認識が薄い事は否めません。
そんな偏見が多い中でも、建築業界に入り施工管理者として働く女性は少なくありません。
女性の細やかな気配りとリーダーシップを生かして、男性に負けない程の仕事量をこなして活躍する女性施工管理者は年々増えており、施工管理者で必要とされる建築施工管理の国家資格受験者数も、女性の割合が9年連続で増加しています。
また、建築業界でも多くの環境整備が行われ、女性でも働きやすい環境づくりに努めています。政府や業界団体などの後押しや協力もあり、現場作業員や管理者の意識改革の教育やセクハラモラハラ対策。休みやすい環境づくりや現場の週休二日制の導入など、業界の体質改善が推し進められています。
建物は力だけでなく、繊細さも必要とします。今後はもっと建築業界での女性の活躍が期待され、働きやすい環境づくりが勧められていく事は間違いないでしょう。
※この記事はリバイバル記事です。